(高校生)

 

大事な月9の宣伝ポスターの車内吊り。

見つからないようにこっそりクローゼットの壁に貼っている。

着替えるたびにそっと覗いては満足していたけれど。

 

ドアをノックする音。そして、いきなり、私のクローゼットのドアを開ける。

 

「お嬢様ちょっと失礼しますよ」と断ってから開けられたものの、その早業を制することはできない。

 

「何故ポスターが隠すように貼ってあるのかお聞きしましょう」

 

「ミーハーだとお思われたら恥かしいからよ」

我ながら上手い嘘だ。

 

「そうですか。でも車内掲示期間がまだ期限内のものをどうやって手に入れられたのでしょうか?」

 

「お嬢様、質問には、ちゃんとお答え下さい」

 

「もらったのよ」

 

「お嬢様?」

 

「わぁかった。黙ってもらってきたの」

 

「で、見つかるとまずいので隠して貼っていたと」

 

「そうよ。誰よ?お喋りね」

 

「人のせいですか」

 

「別にそういうわけじゃないけど・・・」

 

「そういう風にしか聞こえません」

 

 

「今日は痛いですよ」

「さ」

そういって山崎は私を膝の上に乗せた。

 

「『今日は』っていつも痛いじゃない。これくらいで、お仕置きなんて」

 

山崎が部屋に入ってきたときから、一貫の終わりだという事は薄々

気がついていたけれど、いざ現実の事となると、途端にうろたえてしまう。

黙ってる山崎が怖くて降参。

 

「山崎。ごめんなさい。素直じゃなかったわ。ポスターも返してくるし」

第一この膝の上っていうのが形勢不利。

 

「そうですか。では、しっかりとお仕置きを受けていただきましょう」

『そうですか、反省してるみたいなので、大目に見ましょう』とかって言わないわけ? 

もしかしたら、少しおまけしてくれるかもしれないという、かすかな期待は微塵と崩れ、あきらめ気分で最初の一打を待つ。

 

「黙って人のもの持ってくるのは犯罪です」

「みんなやってるのよ」

 

「全然反省してらっしゃらなかったのですね。そういう子には厳しくお仕置きです。」

 

 

 

“あ”と思った時には既に遅し。

 

パシーン パシーン いつものように 初めはゆっくりと、でもすぐに

痛みはピシピシと叩かれるたびに確実にお尻に容赦ない痛みを与えていく。

 

痛いと思うと次の一打が襲ってきて、さらには、ちょっと前に痛かった痛みが

消えかけたと思った所へ次の新たな痛みが追加されていく。

 

こんな理不尽な事ってない。といつも途中で一回は必ず山崎に対して

怒りを覚えるのに、もうやめて欲しくってたまらなくって、暴れまわまわっても

一向にペースが変わらないのもいつもの事。

あまりに痛くって、そのうち本当にごめんなさいって思えてくる。

最初はお仕置きされることが嫌でひたすら逃げたかったのに、いつしか

その痛みが反省へと結びついてる。

 

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

 

何度目か分からない呟きにようやく山崎が答えてくれる。

 

「人の噂は千里を走るのですよ」

 

「悪い事は隠しておけませんよ。お嬢様」

 

そういいって優しく椅子に座らせてくれる。

 

「後で小百合に冷やしたタオルを持ってこさせます」

 

それだけ言って山崎は部屋を出て行った。

 

「お嬢様。すみません」

 

「どうしたの?小百合。」

「私がお嬢様の部屋に新しいポスターが張ってあるって他のものと噂していたばかりに」

 

「そう。いいの。いけないのは私だし」

「それに、別に口止めしていたわけでもないしね」

 

「お嬢様すみません」

 

そういいながら、小百合は何度もタオルを取り替えてくれてもういいというのに、しきりに傍でお尻を冷やしてくれた。

 

「もう。本当に怒ってないから」

ほっとする冷たさだけど、ちょっと恥かしい。

悪いのは地獄耳の持ち主だもの。いいじゃない。ちょっとくらい。
相手は地獄耳だから、小百合には言わなかったけど。心の中で、毒ついて痛みを紛らわした。

 

 

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