(高校生)

 

「立てなくなる程、我慢なさるなんて」

ため息まじりに、私の足を見る山崎。

 

お迎えの車の中。

「小さい頃、山で無理して結局私がおぶる羽目になったことはお忘れですか?」

 

「あなたが勝手に我慢する事で結果多くの人の心配と迷惑につながるかもしれないと言う事をお考え下さい」

 

山崎の小言は続く。正に言われた事を思い出していたところだから、余計に耳が痛い。

 

「お仕置きは覚悟下さい」

 

「そんな。なんで?」

怪我してるし、お仕置きは免除されると多寡をくくってた。

 

「理由はお分かりのはずですよ。今申し上げたでしょう。一人の勝手な行動はなんですか?英雄気取りですか?」

 

「上に立つ方の我慢は周りへの迷惑につながると言う事をお忘れのようですからね。お尻にお教えしないと理解が出来ないと判断いたしました」

 

長く勤める小柴は黙って運転している。

 

「だって、私もう高校生よ」

 

「関係ありません」

 

ピシャリといわれてしまう。

 

「でも」

 

「でもじゃありません」

「口答えですか?」

「皆様にご迷惑をおかけしておいて、ごめんなさいもいえないお方が一人前だとは到底言えないのではないですか?」

 

 

最近は父の仕事。秘書をしていて、前のように家にはいないけれど、

さすがに小さい頃からのお目付け役。痛い所を突いてくる。

山崎だけにはどんなに甘えてみても、なき脅しをかけても通じないのは百も承知。

 

いえに着くと、

「さ」

そういって私を軽々抱える。お姫様のように抱えられたまま、階段を上がる。

 

「山崎。そんな。私歩けるわ。」

 

「いいえ。階段は無理です。大人しくつかまっていてくださいね。二人で階段から転げ落ちたくはないですから」

 

 

恥かしくって 顔を上げられない。

今からのお仕置きが無ければ、羨ましがられるようなシーンなのに。

 

「さ、お部屋で制服を着替えて私が戻ってくるまで大人しくお待ち下さい」

 

そういわれて、痛む足首をかばいながら、そっと着替えを済まし、

大人しく座って待っている。

 

一般的にかなり格好いい部類に入る山崎。

その上武術で鍛えた広い肩と細い腰。うーん。しかし、その腕力を使って何が悲しくて私はお仕置きを受けなくっちゃいけないんだ・・・。

 

あーあ。テニス部の部長がクラブを休むわけに行かないと思って、

痛めた足で軽い試合だからと打ち合いを始めた途端、

思わず走って玉を追ったのがいけなかった。

痛かったのに無理をして、余計に負荷をかけたため立てなくなって

結局迎えを頼むために家に連絡をする羽目になったのだった。

 

本当は小百合に荷物を持ってもらい、小柴さんに運転して帰るシナリオだったのに、山崎が来るなんて。忙しくって普段は家にいないはずの山崎が迎えに来るなんて。

保健の先生、なんていって家に電話したんだろう?

 

「さあ、お嬢様。ベット上にうつ伏せになってください。お膝に乗せると足に負担がかかるといけませんから。」

 

「手で叩くのは無理ですから、ちょっと痛いですがこれで10発叩きます。」

 

「ちょっと痛いってどれくらい?」

パシーン

 

「痛い!」「ヒドイ。心構えが出来てなかったのに!」

 

「これでお答えになったでしょう。さ、下着を下ろしてください」

 

「無理よ。スパッツの上からでも十分に痛くって、こんなの、お尻にじかになんて無理だわ」

 

「お嬢様のしでかした事はこれくらいのお仕置きは当然なのですよ」

 

「さ、ぐずぐずしているともっとたくさんお仕置きをもらう事になりますよ」

 

この言葉で決まりだった。山崎に楯突くなんて怖くってできない。

 

 

しぶしぶパンツを下げる。さっきみたのは木の棒みたいだった。

顔の下に枕。

ピシー。

顔を枕に押し付けて耐える。

ピシー。

気持ちの用意が出来るまもなく次の一打。もう一打。

 

必死で我慢。10発っていったんだもの。

涙はボロボロ零れていたけれど、自分が悪かったのも分かっているし、

山崎が悪者になってくれているのも。だから、だから我慢と思うのに、

 

「最後の一発です。」

ピシー

と終わっても、そのまま泣いて、起きてゴメンナサイを言いなさいと言われたのに出来ないでいた。

ピシー

いわれた事が出来なかったので、山崎から無言で余計な一発をもらう羽目に。

 

山崎は厳しい。

 

甘えは決して見逃してくれない。他の使用人だったら、仕方ないって許してくれるレベルでも、絶対に言った通りのことを私にさせる。

 

「ご・・・ごめ・・ご・・ごめん・・・な・さい」

 

泣いてて上手くいえなかったけれど、山崎はこれ以上は厳しくしなかった。

 

「涙をお拭き下さい。緒方先生に足を診て頂きますから。」

 

「呼んだの?」

 

「念のためですが、診ていただかないと。」

 

「私が見た限りでは捻挫のようですが、心配ですからね」

 

緒方先生の診察も捻挫だったけれど、2.3日安静にと言われた。

山崎は心配して、明日はずっと家にいるという。

嬉しいような、怖いような。

 

「そうですか。では今夜はよく足とお尻を冷やしてお休みくださいませ」

 

「明日は学校をお休み下さい」

 

やった。ラッキーと思わず英語の小テストがサボれるという喜びが頭を掠める。

 

「勉強はどこででもできますから」

 

そう一言だけ残して、山崎は部屋を出て行った。うっ。釘を刺された。

 

 

次の日、山崎の話で部活は大盛り上りだったと、お見舞いに来た後輩が話してくれた。

茶髪しっぽのイケメンとあれば。ま、そうかもしれない。

 

「先輩、痛々しいです。痛そうにされてて」

 

って足より痛い所があるんだよね。実は。

 

「ごめんね。心配かけて」

 

ちょっと照れくさく一言だけ言った。

きっと山崎がそばにいたら、『なんですか?そんな言い方。』といってやり直しさせられていたと思うけど。

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