(中学生)



 

実はちょっぴり好きだった。

 

 

 

 

結婚式に参列して、胸がちょっとキューってなった。

 

前の晩は親友の智子にぐちって長電話。初恋の人持ってかれたよって。

 

言う事聞かないとめちゃめちゃ怖いくせに、本当に、何でも出来て、紳士的。私のカッコイイお目付け役は小枝子さんという人と今日、結婚してしまった。

 

初めてそれを知ったとき、わざと強がって、『おめでとうございます』なんていったけど、本当は動揺した。
だけど、やっぱり結婚してしまうのね。山崎。

 

結婚するって知った次の日、面白くなくって、ちょっとふてくされて、ほんのちょっと門限に遅れたのが最後のお仕置きだと覚悟していたのに、どうして、もう大人なのに。こんな風に笑顔で山崎の結婚お祝いできるのに。「まだまだ子供ですから」そうニッコリ笑う山崎は全然私の願いを聞き入れてくれない。

 

 

「お嬢様。お越しいただいてありがとうございます」

 

そういってニッコリ微笑むその人の隣には同じ色、同じ形をした指輪が光る、幸せそうな女性が立っていた。

 

「少し休暇を頂ますが、その間私を心配させるような事はしでかさないようにお願いしますよ。」

 

「わかっているわ。山崎。小枝子さんの前でやめてよ。」

 

軽口を叩くのも一苦労だわ。小枝子さん素敵な人と結婚できてうらやましい。

一回り以上、歳も離れていては私は候補にもあがらないか・・・。

 

さっきの会話を思わず思い返してしまう。

私の事、いつも山崎は子供扱い。

山崎の目が光っていなければ不良にだってなれるのに。

よからぬ思いはよからぬ行動へと結びつく。

だからってわけじゃないけど、予行練習がてら、山崎がいない一週間、学校帰りに必ず寄り道をして遊んでみた。

メイドの小百合の小言は無視よ、無視。

「お嬢様。山崎様がお知りになったら、お怒りになりますよ」

 

「小百合さえ言わなければ分からないじゃない」

 

そうわざと突っ張って、小百合を困らせる。

 

いつもより、毎日少しだけ遅い帰宅。山崎がいない間しかできないなんて、勇気がないわ。

そうだ。来週の月曜日も今日と同じくらいの時間に帰えろう。もう門限を決められるような子供扱いは御免だわ。

 

そう強がってみたものの、月曜日の授業を受けながら一日中迷っていた。

実行に移すべきか、やっぱり門限通り帰るべきか。

 

結局、ちょっとだけ、ほんの一時間だけ遅れて帰宅した。

 

家への帰り道、自分の子供っぽい行動を後悔して、益々帰りたくなくなって、

重い足取りで歩いていると、門の前に見慣れた男の人が立っていた。

 

「お嬢様」

後悔で胸がギュッとなる。

「山崎」

「私がいない間、ずっとこんな事をしていたそうですね」

 

小百合のお喋り。

 

「お部屋でゆっくりお話をお聞きしましょう。さ。」

 

そういわれて、肘を取られて強制的に部屋へ連行。

有無を言わさず向かい合わせに座らせられる。

 

「こんな悪さ、されるのは初めてですね」

 

「そうよ」

 

「何か理由がおありですか?」

 

 

 

「私にはもう門限はいらないのよ」

 

「どうしていらないのですか?一方的にいらないと言われても、時間通りに帰ってくると思って待っている者の身にもなってください」

 

「誰も待っていないもの」

 

「どうしてそのような事をおっしゃるのですか?」

 

「どうしても。よ」

 

理由なんて、まともな言い訳を考えていなかったから突っ走るしかない。

 

「お嬢様?」

低く、怒ったときの声。

 

「だって」

途端に動揺する。怒ってる?お仕置きしたり、しないよね?

「拗ねているのですか?」

 

「そんな事、するわけないじゃない」

 

「私はもう子供じゃないってことよ。子ども扱いされたくなかっただけなのよ」

 

「そういわれましても、まだまだ大人の監督の下で過ごされるのですから、それは子供と言う事なのですよ」

 

「そして、この家にはルールがあります。ルールを守れない場合には私がお仕置きを致します。これも決まりです」

 

「そんなのずるい」

 

「ずるくないです。ではお嬢様は一人で生活が出来るのですか?」

 

「・・・」

 

「お嬢様が成人されるときまで、私は何度でもお教えいたしましょう。では、膝へ乗って頂きますよ」

 

「さ」

 

「だって」

最後の抵抗。

「衝動的な行動は感心しませんね。それに小百合がとても心配していました」

 

「・・・」

 

「最初から素直に謝ればお仕置きは許して差し上げたのに、ごめんなさいも無しですか?今日は痛いですよ」

 

「ごめんなさい」
「口先だけなら、必要ないです」

嘘よ。山崎はごめんなさいっていっても絶対にお仕置きするくせに。

 

「でも、寂しい思いをさせましたね。その分は少し甘くして差し上げます」

パチン パチン

「痛い。全然甘くないわ。山崎」

パチン パチン 

 

「そうですか?おかしいですね?では本当だったら、これ以上厳しかったと言う事でしょう」

 

平然とそんな事言う山崎って・・・。

パチン パチンパチン パチン

「お嬢様、早く大人になってくださいませ」

パチン パチン パチン

 

「痛い。休憩にして。いやだぁ」

「なってるのに、認めてないのは山崎だけよ」

 

「はい。はい。そんな口が叩けるうちはまだ終わりませんよ」

 

パチン パチン

パチン パチン

痛い。けど、久しぶりの山崎。やっぱり甘えているのかしら?私。

 

「痛いって言ってるのに〜」
私の声は黙殺された。

 

 

 

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