(中学生)



 

「もういや。」

 

そういって席を立つ。

ミセス リンの授業中に耐え切れなくなって部屋に閉じこもる。

鍵はかかっていないけれど、誰も入ってこない。

 

戸の外から、

使用人の誰かが「お嬢様?どうされたのです?」と言う声が聞こえるけれど、無視。

 

 

「お嬢様?」

 

あ、低い声。誰がやって来たのか分かる。

そうなる事を半ば予想していたのに、いざ扉の所にいるのが分かるとどうしていいのかわからない。部屋の中を落ち着きの無いクマみたいにうろうろ。

 

「開けますよ?」

「駄目!入ってこないで!」

 

 

「どうしてこのような事をされているのか山崎にお話ください」

 

「だって。もうたくさんよ。好きでこの家に生まれてきた訳じゃないのに、マナーマナーって私ばかり」

 

「お嬢様、まずドアをお開け下さい」
冷静な声。

 

「だって、ドア開けたらお仕置きするんでしょ?」

 

「分かりました。お仕置きは致しませんのでここをお開け下さい」

 

「本当?」

 

「山崎が嘘をついた事は無いはずですよ。」

 

そんなの、分かっていたけれど、ちょっと口からでてしまった。

本当は引っ込みがつかなくなっていて、自分でもきっかけが欲しかった所。

 

無言は肯定と取ったのか、ガチャっと勝手にドアがあく。

すかさずよく知った黒髪ロンゲのお目付け役が入ってくる。

 

「お嬢様、来ていただいている先生に失礼ですよ」

 

「だって、好きでやっているわけじゃないもの」

 

「あなた様の将来の地位を願った所で、どんなに努力しても手に入ると言うものではありません。この家に生まれたからこそのものです。であれば、当然それに見合うよう色々な事を身に付けていただかなくてはいけません」

 

「いやなの。そういうの」

プイっと横を向く。

「本当はわかっていらっしゃるのですよね?」
向けた顔を正面に戻されキレイな目で覗き込むなんて、ずるい。

 

「そりゃ・・・。」

山崎が微笑む。

「ちょっと我侭を言っただけなのは分かっていました」

「お嬢様が本当は努力家なのも知っています」

 

「山崎。もういいわ」

 

「悪いと反省されているのですね?」

 

「悪かったわ。ミセス リンに謝りに行きます」

 

「皆がお嬢様の事を大切にお使えしていると言う事も忘れてはいけませんよ」

 

「それも分かっているわ」

わかってる。わかってる。わかってるけど窮屈なの。

「そうですか」

 

「では賢いお嬢様は私に言うべき言葉があるのもお分かりですね?」

 

 

「ごめんなさい」
なんでも、気がつくいたときにはいつの間にか、山崎の術中にはまってる。

 

「それとは別にもうひとつです」

 

「え?」

 

「先ほどお約束いたしましたので、私から強制的にお仕置きは致しません。しかし、お嬢様が私にお願いするのなら話は別です」

 

「え?」

ズルイそんなの。

「やだ。山崎。私言わないわよ」

 

「おや。お嬢様、そうですか?本当にそれでよろしいのですか?」

ずるいもん。そんな言い方。

 

「しばらくお仕置きをしていないと、ご自身の取るべき行動も意志の弱さで楽な方へ行くようになってしまったのですか?」

 

「であれば、今日は致しませんが、明日からは厳しい日々になることでしょうね」

 

「やっ。厳しいのは嫌」

「わかった。わかったから」

「私が悪かったから」

 

「悪かったお嬢様はで、どのように反省なさるのでしょうか?」

 

意地でも言わせる気なのね。山崎。

 

「お仕置き・・・」

 

「そうですか。お願いされては私も本気で致しましょう。」

 

って、山崎って本当に食えない。

意地が悪い。

最初っからこうするつもりだったのね。

 

「我侭なお嬢様ですから、お尻にたっぷりとですね」

椅子に腰掛けて、その上に私を

お尻むき出しの状態で膝の上にスタンバイ。

「やだ。すぐに反省したから、たっぷりとじゃなくして。痛いのやなの」

 

たっぷりというのは脅しの言葉だけだったらいいのだけど・・・。

 

パシン パシン パシン パシン

 

「最近は私が全て見て差し上げていませんが、こんな態度であれば、他の先生からもお嬢様の態度については、ご報告いただいたほうがよろしいかもしれませんね」

「いたい〜」

パチン パチン

 

「山崎」「こんなことしたの、今日だけよ。本当よ」

 

パチン パチン

 

「素直に悪いとご自身で認められない程、我がお強くなってしまって。山崎は悲しいです」

「認めてる。認めてるから」
「ギブ。もう。やだ。痛いから。やだ」

パチン パチン

マジで痛い。相当、力が入ってるんですけど?もう我慢できなーい。

痛い、山崎。

 

本当はお嬢様ばかりのせいではない。

大切にされすぎると人は勘違いする。

そして、ご忠告申し上げる者がいなければそれは益々酷くなる。

まだ。こんなに不安定な年頃だ。

 

パチン パチン パチン パチン

「それくらいで・・・」手をお尻にやると、さっと払いのけられる。

 

「まだですよ」

パチン パチン パチン パチン

 

「痛い。ねえ。もう」

パチン パチン パチン パチン

 

「山崎。終わりにしてよ。お願い」

パチン パチン パチン パチン

 

「ご自身で反省されているのですね?」

 

パチン 

 

 

「してる。してるわ。」

パチン パチン 

 

「では、いいでしょう。」

「私の目がいつも光っている事をお忘れなく。」

パチン

 

うー。痛かった。

 

小さい頃から知っている山崎のお仕置きは飛びっきり痛い。

私が適当に痛い、痛いと大げさに言ったところで決して甘い顔をしてくれない。

怖い人。

久しぶりの山崎の出番できっと今日は椅子に座るときに慎重にならざるを得ない。

 

「これからは、もう少しお嬢様とお話させていただいた方が良いですね。お父様にお話してお嬢様のお目付け役としての仕事ももう少し時間冠が取れるようにお願いしておきます。」

 

えー!といいそうなのを必死でこらえてみたけれど、あー。悪夢だ。

 

「お返事はどうされました?」

ニッコリ微笑むその顔は、お仕置きしたばかりとは思えない。

何事も無かったかのような見事なポーカーフェース。

 

私はハンカチが必要なのに。

 

 

 

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