「今ね、手編みが流行ってるんだって」

 

「有紗には無理でしょ」

 

「できるもん。失礼ね!」

 

「あきっぽくって、長続きしないじゃなか。お尻痛い思いしないと勉強もできないくせに。無理無理」

 

そういわれると俄然見返したくなる

 

「仁のクリスマスプレゼントは期待してていいよ。私だって好きなことに対しては根気あるんだから」

 

「・・・」

 

「もおー。超失礼」

 

たしか、そんな会話を10月辺りのデートでしたような。

ああ。あの時の挑発にさえ乗らなければと、ココしばらく後悔しまくり。

 

取り掛かると楽しいし、2〜3時間あっという間に経ってしまうんだけど、いかんせん、最初の頃の編んでは解き、編んでは解きがひびき、まだ全然形が見えない。
クリスマスがもう一ヶ月近くに迫って来てるの考えると間に合わないかも。

 

やむを得ず色んな物を犠牲にする羽目に。

 

授業の出席とか、レポートの提出とか・・・。

 

 

「あきっぽくないっていう所見せて、見返したかったんだもん」

 

 

電話も、メールもそこそこに切り上げる私を問い詰めようとデートの時に事情聴取が始まった。

「初心者なんだから、マフラーとか、靴下とかからはじめればよかったのかもな」

優しく言われても、カチンと来る。

「なんでそういう事いうの?」「もういい」

ギャクギレだ。自分でもわかってるのに、一番まずいパターン

 

「なにがもういいの?」

仁はあくまで冷静。その口調からなにから、よけいにむかつく。

 

「仁は私からのプレゼントなんて欲しくないんでしょ」

 

「なんでそこまで話しが飛躍するんだ?」

 

「喜んでもらいたかっただけなのに」

 

「そりゃあ、うれしいよ」

 

「責められてる気持ちになったんだからね」

 

「なんで?」

 

「もういい」

 

「よく考えてごらん。癇癪起こしてるだけでしょ」

 

ムカツク。その通りだけど、そうじゃなくって、ふわふわっとした感覚で女の子は動いてるのに。正論とか、理論立ててなんて、そんなの求めてないんだから。

 

「帰る」

 

「有紗?いい加減にしないと怒るよ」

 

「もう怒ってるくせに」

 

「まだ、心配・忠告レベルだったんだけどな」

 

「知らない」

本当にふて腐れ始めた気持ちはどんどん悪循環を引き起こしていく。

こんな態度取りたいわけじゃないのに。

 

「わかってないようだから家でちゃんと話しをしたほうがいいみたいだね」

 

そいういってさっさと伝票を持ってレジに向かったから、ムカついた私はレジ横の仁のそばを黙って通り過ぎ、仁を置いてどんどん歩きだした。

 

 

 

 

追いかけてこない仁。

 

ひどい。何でこんな事になっちゃったの?

喜んでもらいたかっただけなのに。。。

 

私が可哀想。

 

悲しくなって、気がついたら仁の家のインターフォンを押してた。

ピンポン ピンポン ピンポン ピンポン 嫌がらせのように何度も押した。

 

「どうぞ」

ドアを開けてくれた仁の目の前にある腕をぐいって押して中に入る。せめてものムカつきの攻撃表現。

 

「なんで追いかけてくれなかったの?」

「自分でいなくなったんでしょ?」

 

「追いかけて来て欲しかった」

「やれやれ、えらく我侭気分みたいだね」

 

「だって、だって。仁はちっともわかってくれないじゃん」

 

「そんな事ないだろ?どんな物でも有紗が相手を思って、考えてくれるものなら嬉しいよ。でも、普段の約束をことごとく破るのは感心しない。自分でコントロールできない範囲にもう入ってるだろ?それを忠告したのに、癇癪起こして」

 

ごもっとも。。。でも素直になれない。

 

「知らない」

 

 

 

「大丈夫」

そいうってぎゅーって抱きしめてくれた。

 

何も言わずにギュっと。

最初はびっくりして、そのうち仁の腕の中でこわばっていた体がゆっくりとリラックスして身を任せる。

 

トントンと背中を擦ってくれたらもう駄目。

 

「ごめん」

 

「大丈夫」

 

大丈夫にどんな付随する言葉が隠されてるのか。主語は誰?述語はなに?

仁は単語しか言わないけれど、心が満たされ、混乱していた自分の卑屈な心が自由になる。

抱きしめられてると、心が安定してくる。

 

「もうちょっとこうしててね」

頭のテッペンにキスされて、ギュってしがみついた。

 

「約束破った子はどうなるんだったけ?」

 

「え?」

「や、まさかだよね?」

慌てて仁の腕から逃れようとするのに、ガッチリホールド。

しまった。私の彼氏さまはとっても怖い人でもあったのだ。

 

「そのマサカです」

 

「だって、今回はしょうがないんだよ」

「しょうがなくないでしょ」

 

「そしたら、やっぱり根性なしって思われちゃうもん」

「クリスマスに間に合わなくってもちゃんと続けて完成させればいいだろ?」

 

「そんな運動会の徒競走の注意事項みたいな事いわれたって駄目なんだもん。クリスマスに間に合わないと意味ないんだもん」

 

「言い訳はいらない。授業にはちゃんと出る。提出物はちゃんとする。いいね?」

 

「有紗返事は?」

 

「はい」

ふくれっつらで渋々返事する。

 

「約束してあること破ったらどうなるの?」

またその質問。。。

 

「やだ」

 

「やれやれ。じゃあ、繰り返さないように厳しめにするか?」

 

「いや。それは駄目。やだやだ。」

 

「素直に受ける?」

 

「・・・うける」

本当はやだけど。

 

「じゃあお尻出しなさい」

 

げげ。あっという間に膝の上に倒されて、あっという間にパンツ下ろされた。

 

「痛い」

「まだ痛くないでしょ。オーバーな」

 

「痛いもん。痛い痛い痛い」

 

「痛いのはこういうの」

 

「いったーい!」「ひどい。馬鹿力」「痛い。今のが痛すぎて全部 凄く痛い」

パチン パチン パチン

 

仁は平然と抗議を無視してお仕置きする。

 

 

 

「ちゃんとするから〜」

 

「ちゃんとって?」

「授業も宿題もサボらないから」

 

まだ終わんない。えーっと・・・。

 

「編み物はできる範囲でするから」

 

「ちゃんとわかってるのにね、有紗は」

「よし」

 

わーい。手が止まったから起き上がろうとしたら

「まだ」

 

え?

 

「ごめんなさいは?」

お尻に手置いたまま聞くのはやめてほしい

 

「ごめんなさい」

 

「何にごめんなさい?」

 

「授業さぼったのと、レポートしなかったの」

 

「それから?」

「え?まだある???」

恐る恐る聞いたのは、思い当たること無かったから。

 

パチン

「体大丈夫か、心配させたでしょ」

パチン

「癇癪起こして」

パチン

「勝手にいなくなって」

パチン

パチン パチン パチン

 

「あああ〜。わかったわかったあ。全部ごめんなさいぃ」

 

「お尻痛いよ。怖いよ」

 

怖いよか。思わず笑いそうになった。やれやれ

 

「自分に自信もちなさい。有紗のこと好きなんだから。わかった?」

 

今、物凄く嬉しいこと言われた気がする。

 

「えへ」

 

「お仕置き中の返事は『はい』でしょ」

ペチンって優しくお尻叩かれた。

 

仁はもう怒ってない。

「あのね」

 

「ん?」

 

「大好き」

 

 

 

 

 

 

 

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