孤独だと思ったらたまらなくなった。

 

皆と騒いでる時も、通学途中でも、自分がひどく孤独な気がして悲しくなった。

 

こんな時にそばにいてほしいのに、

仁は忙しい。

 

頼りたいのに、甘えたいのに。

 

 

 

言葉をぶつける相手がいないのに、『バーカ』なんて一人呟いたらよけい切なくなりそうで、溜めた思いのせいで苦しくなる。
部屋で音楽聞いてると、どうしようもなくって、ふてねしてみるけど、横になっても頭だけは妙にグルグルとメロディーを追ってしまって眠れない。

 

仕方ないから、適度な範囲でといわれてる、ネットの世界でふらふらと夜が明けるまで過ごす。

日中は眠くて、夜は寂しい。
くりかえされる、ふわふわとした生活。そんな、たまらない生活が数日続いているせいで
目の下にくっきりとクマができてた。

 

久しぶりに会った途端、仁が

『ふらふらしてるように見えるけど、具合悪い?』とすぐ聞いてくれた。

 

 

「やだーっていったのに」

 

仁の膝の上でもがく。

 

絶対に謝んない。有紗 悪くないもん。仁がいけないんだもん。社会がいけないんだもん。

 

「フラフラして」

 

「してない」

 

「デート楽しみにしてたのに」

 

出かける前にオシオキと宣言されて、しばらく散々駄々こねた。

でも、仁は、当然聞き入れてくれるわけ無がない。

 

「痛いのやだ」

「嫌なら、約束守ればいい」

分が悪い。久々に会えて嬉しいはずの、その人の顔を見る勇気が無い。

 

「そんなに、フラフラして。心配するような事しておいて」

 

「だって」

「だって、仁が構ってくれないから」

俯いたまま、ボソボソと無駄な抵抗を試みる。

 

「有紗。それが、夜更かしの不規則生活の言い訳?」

あ。やっぱり、睫毛長い。フサフサ。

 

「約束破っていい理由にはならないでしょ」

 

するりと、言い逃れしようと、うらみ節で反撃にでたはずなのに、あっけなく、コーナーに追い詰められた。後がないのわかってて、精一杯の反抗心を支えに最後の悪あがき。

 

「なんていうの?」

 

「言わない。絶対に謝んない」

 

ひっこみつかない。あんなに寂しい思いしたんだし。と思ったら悔しくなって、

反抗心に火がつく。

「原因は有紗に無いもん」

 

「誰が悪いの?」

 

「やだ」

 

「質問の答えになってない」

 

「答えたく無いもん」

 

「じゃあ、答えたくなるまでお仕置きするか?」

 

「やだ」

 

「やだじゃなくて言う言葉あるでしょ」

 

「絶対あやまんない」こうなったら、本当に意地。

 

「謝るまでお仕置き希望か。いい覚悟だ」

 

「覚悟なんてしてない。やだって言ってるのに。下ろして。膝からおりる」

 

「だーめ」

 

仁はさっさと私の手首を掴んで、勢いであっという間に膝の上に乗せられた。

 

もがいても、どうにも逃げられない。

 

「痛いのしたら、やだー」

 

「やだったら、なんていいうの?」

 

そういって、さっきから、いっこうに手は止まる気配が無い。

だから、痛いんだってば。

止まる気配どころか、痛みが強くなってきてて、そろそろ、意地を張っているのも

限界。

 

悔しくって、どうにもならない、プライドが『寂しかった』と素直に言えずに、益々状況を悪化させる。

 

 

「まって。分かった。ちょっとタンマ」

 

「なに?」

手が止まってほっとする。

 

「休憩入れようというだけの理由なら、待たないぞ」

 

「違う。ちがうもん」

 

「もうしないから・・・」

「もうしないから、何?」

 

「仁が先に謝ってくれたら謝れるかも」

 

「なんだって?」

 

 

「だ・・・から、」

 

言い終わらないうちに再開。

 

最悪の展開。

 

「いったい」

「やあああだ」

 

「やめて。もう十分。無理。バカ」

 

ピタっと手が止まった。

 

「バカ?」

 

「う。うそです」

 

「ゴメンナサイもいえない。我侭のいじっぱり。それを通すのなら、それでもいいけど、お尻大変になるよ」

 

「やだ。すでに大変だもん。有紗のお尻痛いもん。痛すぎるもん」

 

「じゃあ、なんていうの?」

 

最後のチャンスだって事だよね?

 

「ご。ごめん」

 

「ちゃんと」

 

「ごめんなさい」

仁のバーカ。

 

結局言わされた。有紗が悪いんじゃないのに。ちっさく、ごめんを言って、顔をうずめる。

言いたくなかったのに。

 

「反省してる?」

 

「してる。してる。すっごいしてる」もうやけ。

 

あ。今深いため息・・・。

 

「ごめんしたから。もう。したよね?ちゃんとネットの時間守るし、夜遅くまで起きてたりしないから」

急に不安になって、反省する。

天邪鬼だな。私。

 

イッキにまくし立てて、「じゃあ、あと10回な」という鬼発言どおり、

一打毎に、お尻が痺れるような痛みを我慢したら、

 

 

ギュっと抱きしめてくれた。

 

 

 

「寂しいときは、そういえばいいのに」

 

「仁、だって、忙しいもん」

 

「それが分かってるから、余計辛い思いさせちゃったか」

 

「うん」

 

「まあ、わかりやす過ぎる行動っていうのも、可愛いからいいか?」

 

「全然褒めてない」

でも、頭なでてくれる。

 

安心する。

 

仁が包んでくれる。保護されて、甘やかされて、大切にされてるんだって感じられて、安心する。

 

ぎゅっと抱きしめて。そう思って、首に手を回す。

 

「大好き」

 

 

「外でご飯にしたら、お尻が痛くて我慢できない?」

囁くように、いたずらっぽく耳元で仁が囁く。

 

大好きな笑顔。

 

「大丈夫だもん」

恥かしくって強がりを言ってみるものの、かなり痛い。

 

でも、仁、やっぱり、仁の顔みるだけで安心するよ。

この人の笑顔。めっぽう弱いよ。私。

 

今なら、素直にゴメンナサイって言える。そんな気持ちになるまで、

ちゃんと見てくれてる。私がもう少しオトナになれる日ってくるのかな。

 

ぎゅっと抱きしめてくれる、仁の体温が心地良い。

 

周りが見えなくなって、溺れそうになると、今まで自力で立ってた自分を取り戻させてくれる。

ちょぴり、自分の存在価値を確認できて、自分が好きになる。

 

 

 

 

 

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