「えーん。」 

俺の顔見ていきなり泣き出されても・・・。迎えに来ただけなんだが。

ルカの顔を見ると

 

「ちょっと。」

と言って隣の部屋へ連れてかれる。

「なんだ?急に鼻血だしたから、迎えに来いって言われて来ただけなのに。」

「なんで俺の顔見て泣き出したんだ?」

 

「チョコレートを。」

???

 

「ちょっと目を放した隙に、机においてあったチョコレートをつまみ食いしたらしい。」

「それも、二人で一箱あけちゃって。」

 

「突然、鼻血が出てビックリしたんだろうな。泣いてるだけのスミレは埒があかないから、カリンを問い詰めたら、どうやらそういう事らしい。」

 

ため息混じりに見せられた空箱を見る。

確かに、バレンタインの仕事が終わると神さまから箱に入った、一枚の板チョコレートが“弓を射った者”には配られる。

昨日スミレに与えたら、事の外大喜びだった。

食べすぎは良くないと思い、もっともっととぐずるのを叱って、また明日と言って聞かせたのに。

どおりで、俺の顔見た途端に泣き出した訳だ。食いしん坊め。

 

「スミレ、帰るよ。ゼンの部屋でお仕置きだ。」

 

きっぱりとお仕置きの宣告をして泣いてぐずるスミレの手を引いて歩きだす。

鼻にはティッシュを詰めたまま、こんな泣いて苦しいだろうに。

 

「いや。いやだ。ゼン、いやだ。」

「うあーん。」

 

廊下を泣きわめきながら歩くもんだから、すれ違うほかの天使がなんだ?という表情で見るが、少しもひるまずどんどん歩く。

 

 

「さ、泣き止みなさい。」

 

ひっく。ひっく。

「無理だもん。」

 

「泣き止むまでそのまま一人でここに立ってるか?」

「いや。いあああ。ゼン嫌だ。」

ことさら大きな声で泣く。

まったく、どこにこんな体力があるんだか。

 

次から次へと溢れてくる涙を拭いてやり、優しく膝の上に乗せてやる。

今は厳しい事を言っても理解できないだろうから。

 

「よしよし。さ、鼻血が止まったか見せてごらん。」

 

さすが、ルカだな。ちゃんと鼻血が止まってから俺を呼んだのか。

 

「よし、もうティッシュはいらない。大丈夫だ。」

 

そういってしばらく膝の上で抱いてやる。

声が段々落ち着いて、しゃっくりもゆっくりになっていく。

トン トン とゆっくり背中を叩いてやりながら、落ち着かせる。

 

 

 

「スミレ、勝手に人のもの食べちゃだめだぞ。」

「うん。」

「次からはお行儀良く、『どうぞ』と言われてから食べなさい。」

「うん。」

 

「昨日、全部一度に食べたら駄目だと言ったのに、そんなに食べるから鼻血が出たんだぞ。」

「うん。」

「ごめんなさいは?」

 

「ごめんなさい。」

 

 

「よし。よく言えた。」

そういって体を横にひっくり返す。あっという間にお仕置きの態勢。

「やだ。やだやだやだ。」

 

「どうして?悪かったんだろ?悪かったらお仕置きされるんだろ?」

 

「だって、スミレだけなんてやだもん。」

「スミレだけって?」

 

「だって。カリンはお仕置きってルカに言われなかったもん。」

なるほど。

 

 

もう一度、だっこして、ゆっくり聞く。

 

「スミレは悪い事してないっていうの?」

 

「チョコレート勝手に食べちゃったのは悪い事でしょ?」

 

「うん。」

しぶしぶだな。この顔は。

 

「ゼンは悪い子にはお仕置きする。」

 

「だったら、カリンもお仕置きされるの?」

「されるだろうね。それとも、スミレもカリンと一緒にルカにお仕置きしてもらうか?」

 

「やだやだ。ルカ怖いもん。」

「じゃあ、ゼンからお仕置きにするか?」

「やだ。ゼンも怖い。」

やれやれ。もう単なる我侭だな。

 

一気にお仕置きの態勢に戻してパンツを下ろす。

「やだー。」

「やだじゃない。」

パチン パチン

「二度とそんな事しないようにお尻にたっぷりとお仕置きだ。」

パチン パチン

パチン パチン

「悪い子」

 

「・・あ・いたーい。いたいよ。」

「ゼン 痛いよう。」

わーん

 

ひっく ひっく

「反省しない子は終わらないよ。ゴメンナサイっていうんでしょ?」

 

 

 

「うわーん。 いたいよ。 ごめんなさい。」

 

「自分がした悪い事はちゃんと責任取りなさい。」

あああーん

ちょっと難しかったか?

パチン パチン

 

まったく、ルカだったから良かったようなものの、こんな恥かしい事。

自覚がなさすぎるぞ・・・。

 

パチン パチン

「・・・・ご・・・ごめん――な・さい。」

 

パチン

ん?自分から言ったか。

 

「よし。さ、いい子になったスミレの顔を見せてご覧。」

ボロボロに泣きはらした顔。

溢れる涙を拭いてやる。

 

また鼻血が出ても困るしな。

 

「誰かに謝りに行く必要があるの、分かる?」

「ルカ?」

「そう。」

 

「ルカ、怒ってる?」

「ちゃんと謝ったらもう怒らないよ。きっと。」

 

「ゼン、一緒についてきてくれる?」

「一人で行ってこれるだろ?

 

ぎゅっと小さな手で俺の袖口をつかむ。

やれやれ、俺も大概甘いな。

「わかった。じゃあ、部屋の入り口までだぞ。」

 

そういって大声で泣き喚いて通った先ほどの渡り廊下を今度はどよんとした表情で

俺の袖口だけ必死に掴んでもう一度通った。

 

 

「さ、行っておいで。ここで待ってるから。」

 

振り返ったスミレの心細そうな表情にもポーカーフェースで『行きなさい』ともう一度言う。

「ここにいるから。」

 

これ以上は望めないと悟ったのか、しぶしぶ、重い木のドアの内側に入って行った。

 

すぐに出てくるか、それとも、時間がかかるか・・・。さてどうかな?

 

 

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