「『嫌い』は駄目だ。」

  「人にも物にも何もかもに、何かしら役に立っていたり、いいところはある。天使はそこを大切に目を向けなくてはいけないよ。」

お仕置きが終わった後、ゼンからのお説教。

『kamisamanantekirai』って思っていたのわかっちゃったのかしら?

「はい。」

と答えたら、でもゼンはそれ以上聞かなかった。

 

“教育係が付く”という年齢になると、今まで注意だけだったのに、

周りの天使も悪いことをしていれば自分の教育している子供の天使でなくとも、一つ二つはお尻を叩いて教える。

それくらいで済むレベルならば、教育係の耳に入る事は無い。

 

「ゼンにこれは報告します。」

「ヤダ。ヤダ、ヤダ。」

「ヤダじゃないよ。スミレのした事は教育係に報告が必要な内容だからね。」

そういって手を引かれてゼンの部屋に連れて行かれる。いささかのろのろ歩いてみるが、所詮大人と子供。

いつもは優しい天使。

  でも天使も怒るときがある。

  大切な話を聞かなかった時にはやっぱり天空の世界でも地上と一緒。

 

「ゼン。いいか?」ドアをノックする音。

「どうぞ。」

「おや?」

神妙というよりは完全にびくついているスミレを見て何かしでかしたのだと事態を察する。

「スミレ。自分でいいなさい。」

そういわれてルカの顔を見上げる。泣きついても、甘えても絶対駄目っていう顔をしている。

「川に行った。」

「川?」

「・・・・」

思わずルカの顔をみる。そうなんだよ・・・。という顔をしてる。

「スミレ、川には誰といったんだ?」

当然予想される答えを待つ。

「一人で。」

おでこに手を思わずやってしまう。あいたたた。って感じだ。

「本当は二人だ。うちのカリンも一緒だった。」

「嘘はいけないな。」

やっぱりカリンが一緒だったのもばれてたんだ。

「じゃあ、僕はカリンに話があるから後は頼むよ。」

 

川からの帰り道、カリンとバイバイした後、向こうからやってきたルカに問い詰められてここまで連れてこられた。

  カリンをかばったつもりだったけど、今からカリンに話をしに行くってことは、カリンもお仕置かも。そんな事を考えていたら、

「スミレ」

と名前を呼ばれた。

 

「川には大人と一緒でないと行ってはいけないんじゃなかったか?」

「はい。」

「知ってるのにどうしてカリンと二人で行ったんだ?」

 

川底にある石が欲しかったから。

子供天使たちの間で石を集めるのが流行っている。

飛び切り綺麗な白いツルツルの石を持っていたナルシスが川に行けばいっぱいあるって教えてくれたから。

子供だけで行っちゃいけないのは知っていたけど、川底が浅い特別な場所をこっそり教えてもらい、

どうしても行きたくてたまらなかった。

数日我慢したけれど、ついに我慢できなくって行ってみた。

 

 

「ポケットに入っているものを出しなさい。」

「だって。」

「出しなさい!」

しぶしぶ、カリンとやっとみつけた飛び切りキラキラしている白い石を一個大事そうに出す。

「これは川に私が返しておく。」

「やー。」

「スミレ、あの川から物を持ってきてはいけない。あれは黄泉の国に来る人が通る、通り道だ。

白くキラキラ光っているのは天国への道しるべなんだ。」

うつむいたままか・・・。知っていて持ってきたのか?

「スミレ返事ができるね?」

「はい。」

「どうして大人と一緒に行かなかったの?」

「石が欲しかったの。でもきっと駄目っていうでしょ?」

「駄目だね。駄目なのには理由があるんだよ。駄目といわれると分かっていたからこっそり二人で行ったのか。」

どんどんボロが出る。所詮子供だ。

「じゃあ、スミレは今日とても悪い天使だったわけだ。」

「ゼン?」

「泣くのはまだ早いよ。」

「さて、今までの話でいくつスミレは悪い事をしでかしたんだ?もう一度自分で言ってご覧。」

「えーっと。」

辛抱強く待つ。

「川に行った。」

「それと。」

「それと。それと。わかんない。」

駄目か。

「いいかい?僕の後について言ってご覧。」

「子供だけで川に行った。」

「子供だけで川に行った。」

グズグズ。鼻をすする。仕方ないからティッシュで鼻をかんでやる。

「やってはいけないのを知っていて行動した。」

「行動って?」

「川に行くって事。」

「川に行った。」

「やってはいけないのを知っていてという部分が大事なんだ。そこが抜けてる。」

「だって。知らなかったもん。」

「嘘をついた。」

「・・・ついた・・・」

「お仕置きが嫌だと言った。」

「だって。」

「さ、全部一人で最初から言ってご覧。」

グズグズ、メソメソしていて何度も鼻をかまなくてはいけなかった。

何度も肝心な所をすっ飛ばす。本気なのか、わざとなのか、罪悪感を感じてまずいと思っているのか。

本当に手がかかる。

「お仕置きするよ。」

ようやく全部いえたので、お仕置きの宣言。

「はい。」

嫌って言わなかっただけましか。

そう思いながらひょいと膝の上に乗せる。

薄いオーガンジー生地のようなスカートを捲くり、同じ白色のパンツを下ろす。

金色の髪がパサっと下の方にゆれ、パチンとお尻を叩いてやる。

「ひん。」

「わーん。わーん。」

まだちょっとしか叩いてないのに、オーバーな。

でもね今日は厳しいよスミレ。

川に子供だけで行って、小悪魔達が出てきていたら・・・。そう思うとぞっとする。

川はどの空間にもつながっている。だからこそ危険でもある。

全ての世界と共存している場所。そこに、子供が絡むと時にはやっかいな事が起こる可能性がある。

「いいかい。いけないといわれたことは絶対にしてはいけないよ。」

パチン パチン

白かったお尻が赤くなる。

「スミレお返事は?」

「ゼン、もうしない。」

パチンパチン

「もうしない。お尻痛い。」

ってやっぱりそっちか。

パチン パチン

パチン パチン

「終わりにして。」

「駄目。」

「反省が足りない。」

パチンパチン パチンパチン

足りないなんて嘘。

痛いのに。神様のお仕置きより痛いよ。ゼンのお仕置きのほうが。

神様のお仕置きのほうが短いもん。今まで一度しかなかったけれど。

パチン パチン 

「ごめんなさいは?」

パチン パチン

仕方ないので水を向けてやる。

「ごめんなさい。ゼン。」

ごめんなさいを言ったら、本当に悲しくなって一際大きな声で泣いた。

わーん。わーん・

「ルカにもお仕置きしてもらうか?」

「やだー。もうやだー。」

わーわー泣いてても言われてる事は分かるんだな。もうこれくらいにしておくか。

パチーン

「次にまた川に大人がいないときに行ったら、今度は神様の所に連れて行くからね。」

「もうしない。」

「悪い事したら、自分でいいにくるんだよ。今日はルカと一緒だったけど、今度からはいえるね?」

ひっく。ひっく。

「川のことだけじゃないよ。」

ひっく ひっく 泣きすぎてしゃっくりが止まらない。返事も出来ないからうんうんと頷くだけ。

「ルカに注意されたときに自分でごめんなさいって言ったのかな?」

「まだ。」

まだって。やっぱり・・・。

「じゃあ、一緒に行ってあげるから。」

嫌だな。ルカ怖い。

「ゼンからお仕置きされたからもうルカからはされない?」

「さあ、どうだろうね?」

「スミレのお尻。痛いっていってるよお。」

その場でまたぐずりだす。

「スミレ!」

「ルカからお仕置きもらう前にもう一度僕からのお仕置きにするかい?」

「やだやだ。」

また泣き出す。

本当に・・・。手のかかる。

「今すぐ泣き止みなさい。」

静かにそういって、辛抱強く待つ。

ひっく ひっく とまたしゃっくりが止まらないが、まあこれは仕方ないだろう。

おいで。そういって抱っこしてトントンと背中を叩いてやる。

「ごめんなさい。」

小声でそう胸元で囁くのが聞こえた。

 

金髪の乱れた髪の毛を手櫛でなおしてやる。

「さ、一緒にルカの所にいくよ。」

嫌そうに頷くスミレ。本当にわかりやすい。

 

ゼンに手をつながれて行ったルカの部屋。

勇気を振り絞って「ごめんなさい。」を言ったその部屋の奥からは、すすり泣きが聞こえていた・・・。

かすみ様からの素敵なイラストが増えています。もしまだ見ていない方がいらっしゃいましたら、

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