ゼンは『神様から仰せつかった仕事』のせいで、最近みかけない。

 

 

スミレの起きている時間に会えない。

 

神様なんて嫌い。

 

いいなカリンちゃんはルカに会いたいときにいつでも会いに行ける。

 

皆と一緒に歌の練習してたって、皆と一緒に地上の世界のこと勉強してたって、“今日やった事”をいっぱい話したいゼンがいないんじゃ、つまんない。

 

ルカじゃ駄目なんだもん。

セシルでも駄目。みーんな駄目だもん。ゼンがいいのに。

 

「良くできたね」って先生天使にほめられても、なんだか嬉しい気分は長続きしない。

 

 

スミレが、カリンちゃんと喧嘩しちゃったのは、スミレが悪いんじゃないもん。

スミレは他にトモダチ一杯いるもん。いいんだもん。

 

 

さっき、座ってたら、セシルに「元気ないわね」って言われたけど、私はいつもと同じだもん。でも、カリンちゃんが他の子と遊んでるのが気になって、広場の遠くにいるカリンちゃんを目で探して追ってしまってる。

 

 

 

 

 

いい子にしてたって、ゼンに会えないんだから、悪い事すればいいんだって思って、

お仕置きされるのは嫌だけど、こっそり、みんなのボールを捨てちゃった。近づいてはいけない川に向かって遠くから投げた。でも、誰も気がつかない。ボールが無い事。川に一人で行ったこと。

 

次にスミレのミルク入れるコップをワザと落としたんだけど、「大丈夫だった?」

といわれただけだった。

 

皆ちっともわかってない。

 

ルカが一緒に丘に行こうって言ってくれたけど、本当は行きたかったんだけど、

口を真一文字に結んで「行かない」ってさっき断った。

『そういわないで、』ってもう一回言ってくれたら、行きたかったのに。

何も言わずに抱っこしてくれて連れて行ってくれたら良かったのに。

 

 

だから、一人で館までの道を歩いて帰る。転がってる石を蹴ってみた。

 

寄り道したって、帰る時間が遅くったって、ゼンは忙しくって知らないんだから。

 

 

 

 

 

 

「ゼン?」

 

 

 

 

「どうした?ビックリした顔して。」

 

「別に。」

 

「おや?喜んではくれないのかな?それとも、しばらく会えなかったからから拗ねてるのかな?」

 

「違うもん。」

 

なんで?まだ、後10回寝ないと会えないはずなのに。

 

数え間違いなんてしてない。

 

「ちょっと時間ができたから、様子を見に来たんだけれど。」

 

「どうやら、告白する事がいっぱいありそうな顔してるね?スミレ」

頭をなでてもらう。久しぶりのゼン。

 

「でも、その前にちょっとおいで。」

 

そういってゼンは抱っこしてくれた。

一人で歩いてた館までのあと、数歩の道のりを右手だけで抱っこしながら、歩いてくれた。

 

「カリンちゃんに見られたら恥かしいよ?」

 

「そうかな?」

 

そういって、ゼンは黙って館まで入ってそのまま、ゼンの部屋に入って行く。

 

「スミレいい子じゃなかった。」

 

「そうみたいだね。」

 

「知ってるの?」

 

「知ってるよ。しばらく会えないけど、いつもスミレの事は見てるって言ってあっただろ?」

 

「今日来たのって、スミレが悪い事したから?」

 

思わず笑いそうになる。

寂しい思いをさせちゃったな。

 

「今日はもともと会いに来ようと思っていたんだけどね。」

 

「悪い事しなくっても来たの?」

 

「そうだよ。」

 

「ふぇ」

 

罪悪感できっと一杯だったんだろう。たちまち泣き出した。

スミレはまだ小さい。

一人からの愛情を確認したくってたまらないという、その様子に心が動かされる。

 

しばらく、トントンと背中をやさしく叩いていると、大泣きだったのが、次第に落ち着いてくる。

 

「スミレ、ゼンは神様の仕事でどうしてもあえないけれど、他の皆が一緒なんだから、待ってられるよな?」

 

「・・・。」

 

「スミレ?スミレが『ハイ』と言ってくれないと、ゼンも悲しいんだけどな。」

 

「・・・はい・・・」

 

「あと10回寝たら、また前のようにしょっちゅう会えるから。」

 

「うん。」

 

「カリンちゃんと仲直りしたら、オレはもう行かないとな。」

 

「やだ。」

 

「ん?」

 

「じゃあ、カリンちゃんと仲直りしなくってもいいもん。」

 

やれやれ。

 

「そんな事言わないで。」

 

「な?」

 

「はい。」

 

「よし。いい子だ。」

 

 

 

 

 

ルカにカリンを連れて来てもらって、二人を仲直りさせる。

これで、俺が居ない間、一人になる事もないだろう。さてと、最後に

かわいそうだが、お仕置きもしていかないと。

 

「悪い事ばっかりする子はお仕置きだと思わなかったのか?」

 

ビクっとするスミレ。

 

「お・・・。思った。」

 

 

「そう。じゃあ、来なさい。」

 

平然と膝を指す。

 

大丈夫、10発くらい、髪留めが無くってもいいんだよ。

スミレの目が机の上の紐に行ったのに気がついたが何も言わない。

 

「スミレね。悪いとは思ったんだけどね。」

「何も言わなくていい。」

 

言い訳を聞くつもりは無い。すべてわかっているから。

 

すっとパンツを下ろすと、10回だけ、きっちり叩いた。後、10回寝たら会えるその数分だけ。

 

「さあ、もう泣かないで、笑顔を見せてご覧。」

 

自分が叩いてその直後にこんな要求もないな。と思いながら。

俺が一番性質が悪い。寂しい思いをさせてるという罪悪感をこんな小さな子に笑顔を要求して薄めさせようとしている。

 

カレンダーをみてみると、一つの四角に囲まれたスペースに、ゼンという文字がクレオンで、大きく枠からはみだして、書かれていた。黄土色なのは、何のイメージなんだ?

 

 

もう少しで仕事が終わる。

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