「神様なんて嫌い。神様にお仕置きされたの。」
トボトボ歩いてる。お尻がヒリヒリしてる。でも皆の目があるからお尻をさするわけにもいかない。
「ゼン。あの子も教育係が必要な年になった。すまないが、お前にお願いしたい。」
「ゼン。行って慰めてきてやっておくれ。」
「はい。全能の神の仰せとあれば。」
かしこまって神様の前から退出し、スミレの後を追う。
「どうした?おちび?」
トボトボ歩きのスミレに声をかける。
「なんでもない。」
こんなに何かあったというオーラーを出していて『なんでもない』か?
『神様なんて嫌いなんだから。』心の中はその言葉でいっぱい。
「なんでもない訳ないだろう?しおれた顔に涙の後まで付けて。」
ビタっと立ち止まる。涙の後?
ゴシゴシと目をこする。
するとゼンが目の前にしゃがんでゆっくりとスミレの手をどける。
「どうした? 言ってご覧?」
「神様がいけない子だって。」
「どうして?」
「スミレが歌のお稽古サボってたって。」
「本当にサボってたのか?」
「タンポボ取らなきゃいけなかったから。」
「いけなくはないだろう?歌の方に行かなくちゃ行けなかったんじゃないか?それもこの間も確か何してたか忘れたがサボってたよな?」
「サボったんじゃないもん。行きたくなかったんだもん。」
「それは困った。」
「なんで行きたくないんだ?」
「だって。」
「だって?」
「いわない。」
本当は恥かしかった。歌の練習なんてすることが。
やれやれ、質問の仕方を変えるか。
「神様に聞かれてスミレは何て答えたんだ?」
「恥かしかったって。」
「そうなの?」
「うん。」
「そんなの恥かしい事じゃないのに。ゼンだって昔は練習したんだ。だから今は他の仕事も任されている。」
「そうなの?」
「そうだ。天使には段階がある。色んなことはいっぺんには学べないからね。」
「ゼン。神様はスミレが本当に悪かったと思ったらもう一度来なさいって言ったの。」
「そう。でスミレはどう思ってるの?」
「お仕置きは嫌。」メソメソ
ヤレヤレ・・・。
「神様からのお仕置きが嫌なら、僕からのお仕置きにするか?」
「だって・・・。」
べそ。
「こうして会話してるのも、神様は全部知ってるんだぞ。」
「そうなの?」
「そうだ。あまり言っても聞かない子には神様からのお仕置きがある。でもそれは飛びっきり痛いものだね。」
「スミレのお尻も燃えるように痛かった。」
「そうか。」
「じゃあ、一緒に行って謝ってあげるから、そして、お仕置きはゼンからにしてくださいって頼んであげるから。」
「本当?」
「この世界で嘘を言う者はいないんだよ。」
それを聞いて安心した。
さっきまで物凄く怖かった神様の所にもう一度ゼンと行く。
「ごめんなさい。もうしません。」
「スミレ。良く勉強しなさい。」
そして、ゼンにあごで行きなさいと指図して、また痛いお尻をかばいながら長い廊下を歩く。今度はゼンと一緒。手を引いてもらっているけれど、いつもやさしいゼンからやっぱりお仕置きされるのかしら?もういいよって言ってくれないかしら?
「さあ、スミレ、おいで。」
そこはゼンの部屋だった。地球儀が置いてあり、天井は星がちりばめられていて、絨毯は緑の芝のようだった。
キョロキョロしているスミレに
「さ、ちょっと痛いよ。」
そういって膝の上に乗せる。
「言われた事をしないのは天使にあるまじき行為だ。わかるね?」
「はい。」
「天使失格になりたくないだろう?」
「なりたくない。」
「神様からあまりお仕置きをもらうと大変な事になるから。」
「今後は何かわからなかったら、僕に言うんだよ。今日から僕が君の教育係だ。」
「はい。」
「よし、いいお返事だ。」
パチン
「痛い!」
「さ、始めるよ。」
パシン パチン
パチン パチン
神様のお仕置きよりは痛くないけど、やっぱりいたーい。
わーーん わーーん。
「もうしませーん。」
誰からでも仕置きはやっぱりヤダー。ゼン、全然優しくなんかない。痛いよー。
怖いのは神様の方が怖いけど、ゼンのお仕置きも怖い。
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