「呼ばれて、どうしようって思ってる顔だな。」
「・・・」
「僕が怖い?」
そういわれても答えられない。勿論怖い。でもただ怖いだけの人じゃないし。
ハイと言ってしまうと、それが上手く伝えられない気がする。
どうしよう。でも沈黙が続く。答えるまで、待ってるのかな?
そっと顔を上げると、視線がぶつかった。
「僕が怖い?」
そうじっと目を見てもう一度聞かれる。
「いいえ。」
全ての事を上手く伝えられない。
「そう。」
「じゃあ、正直に何でも話して欲しいな。就業時間すぎて、いつまでも引き止めるのもなんだし。」
「僕は残念ながらまだ仕事あるしね。」
「はあ。」
穏やかな声。それにつられてあいまいな返事。
「はっきりしないね。」
「僕が証拠を突き出して、お仕置きしなきゃいけないかな?」
引きつってる。今。私の顔、鏡で見るまでも無く、引きつってる。
「そうしたら、その分お仕置きが増えるだけだけどね。」
さらっと笑顔で私を追い詰めていく。
いつものように。
私がどう反応するか分かっていて、あえてどんどん攻めて来る。
でも、それは自分が悪いって分かっている事に対して。
いつも、仕事ができて、穏やかに人と接している社長。
たまに、いや、時々? 私に対して、厳しい態度を取るのは責任感からなのかな。
望んでいないけど、でもそれもしょうがないって言うか、必要な事かもって、最近思うようになってきた。
なってきたけれど、いざ、目の前に立たされてのこの状況。
これから待っているお仕置きを想像して尚、ペラペラと喋れるほど私はまだ自分の臆病さに勝てないでいる。
「すみません。」
「何に?」
分かっているのかいないのか、ゆっくりと聞かれる。
「コーヒー零しちゃって、パソコンに。」
「使えなくって、仕事溜まって行くの分かってたんですけど、でも言えなくって。」
ふっと笑うような様子を見せる。
「よしよし。よく言えた。」
そういって椅子から立ち上がると頭をなでてくれた。
なんか、嬉しい・・・。
「しっかり罰を受けなさい。」目を細めていつもの口元を上げるしぐさをする社長。
なんか、嬉しい・・・。
と思ったのは一瞬だけだったか。恐ろしいお仕置き宣言。
「・・・ハイ。」
そうやっと返事する私の声は今にも消えりそう。
「何が悪かったのかな?分かってる?」
「ハイ」
「言ってごらん。」
カッと顔が赤くなる。
屈辱まじりの恥かしさがこみ上げてくる。
「いつもちゃんと報告するように言っているね?忘れてるようだからその分も追加しておくかな。」
平然とお仕置き回数追加宣言。ありえない。この人・・・。優しいだなんて
思ったのは取り消し。お仕置きの時は閻魔大王並み。
「すみません。隠し事して、隠し事したせいで、仕事滞ってしまいました。」
「責任感を持って仕事してもらいたいね。さ、今日はちょっと厳しくするか。」
今日は?いつもだけど、なんだかその強調の“は”が怖い。
「来なさい。」
ソファーに座る社長の膝の上。
いつものように、スカートが捲くられる。
この次はパンツが・・・。
「下着もね。」
ワザとそういってから、下着を下ろされる。
恥かしさの極み。早く。早く終わって欲しい。
唱える心とは反比例するように、なかなか始まらない。
なんで?ふと気が逸れたその瞬間、
パチーンと痛いお仕置き。
すっかり最初の一発で我を忘れるほど、いささかパニック気味になってしまった。
パチーン パチーン
と今日はややゆっくり目のペースでも、痛さはいつもと変わらず、体が反り返りそうになりながらぐっと堪える。
いつもいつも、すぐに『痛い』と言ってはお仕置きの回数が増えていくだけなので、
今日こそは。そんな決意をするけれど、むやみやたらに痛い気がする。
「痛い。」
結局恨みがましく、叩かれるたびに・・・。
「痛いデス。痛い。痛いよ。痛い。」
いくら痛いって言っても平然として、ゆっくりゆっくりとしたペースで
同じ痛みが繰り返される。
「すみません。もうしません。」
パチーン パチーン
「ちゃんと報告もするし。」
「そう。」
「でもね。すぐに許すとあまり効力持たないからね。」
「もっと怖がってもらわないと。」
え?最初に怖くないって言ったのはそういう意味じゃないんだけど・・・。
「痛い。怖い。お仕置き中の社長は物凄く怖い。」
「ふーん。」
「だから、もう堪忍。もう十分反省したから。」
「怖いっていうのはいいね。でも、ついでに言うと、僕は厳しくもありたいんでね。」
そういって鬼はさらに数発叩いた。
この可愛い女の子のいたいげな繊細な心に、言いつけを守らないとどうなるかたっぷりと知らしめるために。
「反省してます。もう。本当に・・・。」
涙で余り上手くいえない。
ヒックヒックとしゃっくりだって出てくる始末。
でも、それでもパンツを下ろされて膝の上に乗っている自分よりはまし。
お仕置き終わってもしばらく余りに恥かしくって、絶対に思い出したくないのに、
常にお仕置きされてた数分前の自分を考えてしまう。
「明日、業者の人呼んでいいから。ちゃんと治るまで、この部屋で、ファイルの整理でもしてなさい。昼寝されても困るかね。仕事はたっぷり用意しておく。」
「はい。」
私の顔が再び赤くなったのは言うまでも無い。
「お疲れ様。」
「お疲れ様でした。」
部屋を退出したのは覚えている。
でも、家まで、いくつ駅を乗ったのか、余りはっきり覚えていない。
さっきまでの膝の上に乗っていた事がどうしても頭から離れなくって、ついつい
嫌なのに、嫌なはずなのに、その事ばかり考えていたから。
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||