会社のクリスマスパーティに誘われた。といっても受付をするようにとの事。

 

「ボーナスだ。」「着ていく服を買いに行こう。」

って気を使ってくれて、一緒に買いにいったのが2週間前の水曜日。

 

「杉山様、いつもありがとうございます。」

と挨拶をするデパートの人と一緒に買い物するなんて、こんな事あるんだ・・・。3人の中で私だけみたい、こんなに緊張しているの。社長はいつもの事って風。

ビロード生地。色は深紅でちょっと私には無い感じのワンピース。『似合いそうなのを。』ていう言葉だけで、デバートの係りの人と店舗に入ると次々にワンピースが出てくる。ちょっと大人の雰囲気で、自分でも気に入った3着目の試着室から出てくると、

「大丈夫よく似合ってる。」

そういって笑ってくれた。

包んでもらうのも、お会計も待たず、そのまま会社に戻った。そういう世界ってあるんだ。って感心していたら、やっぱり社長ただものじゃないかもなんて今更のようにちょっと尊敬。1時間後、受付のように会社で座っていると先ほどのワンピースが届いた。開けたくて仕方がなかったけれど、他の人の目もあるし、じっとと我慢。その日は幸せな一日だった。

 

 

 

そしていよいよクリスマスパーティー。

招待状をお持ちのお客様にお名刺を頂き受け付けをする。初めての事でドキドキしながらも『一生懸命てきぱきと』を目標になんとかこなす。都内のレストランを貸切り。食事が美味しそうだけど、食べるのは皆様が帰った後まではダメだと釘を刺されている。いいにおいに包まれている中、一通りの仕事が終わってしまうと暇。やっとホットしてあたりを見回すと、職場の人はそれぞれご挨拶とかしているし、私一人受け付けでお留守番。いいな。いいな。中はどんななんだろう。

 

こっそり、お行儀が悪いとは思いつつ厨房の入り口を覗きに行ってみたら、バチが当たった。

持ち場を離れてるのが見つかるとまずいと思い、会場内に入るのはやめておき、かといって他にする事無いからブラブラと気楽な感じで覗いたその瞬間、ワインボトルが床に木っ端微塵に砕け散った。出てきたソムリエとあまりに運の悪いタイミングでぶつかってしまったのだ。お店の方が恐縮して、別室に連れて行かれ、服にしみが出来ていないかとか、怪我は無いかとか丁寧な対応をしてくださる。でもそうされればされるほど恐縮してしまい、『大丈夫ですから』としばらくして受付に戻ったときには借りてきた猫のように小さくなっていた。

 

丸山さんが笑顔で向かってくる。

「しばらく交代するから、食事してきたら?」

「え?でも。」

「大丈夫。控え室に用意されているから、好きなもの召し上がれ。」

そういって笑って送り出してくれた。

どれも美味しい。こんな素敵なお料理始めて。一人で食べるのが残念だけど、気兼ねなく食べられていいか。一時間自由にさせてくれるなんて。やっぱり丸山さんって気が利く。ワインにはビックリしたけれど、こんなに美味しいお食事と綺麗な服を着て。やっぱり東京っていいな。そうしみじみと大人のクリスマスパーティーだった。

 

「喜多見さん。ちょっと。」

あけて翌月曜日の夕方社長室に呼ばれた。

「失礼します。」

「金曜日は受付ご苦労様だったね。」

「あ、いいえ。」

「お店の支配人がお詫びにとお菓子が届いてね。」

ギク

「怪我は本当になかった?」

「大丈夫です。」

「そう。で、どうしてソムリエとぶつかったんだ?店側というより、君の行動の方を疑うようで悪いけどね、毎年あの店でやっていてこんな事は初めてだから。」

「あの。私が悪いんです。」

仕方なく告白。

そしてお決まりのように微妙な空気が流れる。

 

「言われた事、まともに出来ないのか?」

ちょっとあきれ気味。だよね。私だって何してんだかって思う。

「すみません。」

「子供だって言いつけを守れるだろう。それが自分が雇っている社員に対して僕が言わなきゃいけない事かと思うと、力がぬけるというか、なんというか。」

「すみません。」

「もういい。戻ってよろしい。」

そういわれて解放された。てっきりお仕置きだと思ったのに。え?って思ったまま残りの時間を過ごした。これでいいのか?これで?

家に帰ってから、閻魔様のノートを取り出した。

「どうしたの〜?また叱られた?」

「元気だしな。よしよし。」

三木ちゃんが声をかけてくれる。

「うん。ちょっと。」

そういいながら今までのページをめくる。

やっぱりごめんなさいって明日もう一度言おう。パラパラめくりながら決意する。

 

決意は朝起きても変わらなかった。

電車に乗っている間、どうやって話すかそればかり考えていた。

 

社長のスケジュールは午後3時が開いている。そこで話が出来るか朝聞いて・・・。

社長の 顔を見るまではそう思っていたのに。

「おはようございます。」

いつものように挨拶をして、目が合った瞬間、思わず視線をそらしてしまった。そのまま社長は社長室へ。あんなに昨日の夜から考えていたのに、何やっているんだか私ってば。

 

言おう、言おうと思っているのに、言えない。言い出せない。

そうしてその日一日いえぬまま終わってしまった。

 

夜になって閻魔様のノートを取り出す。

明日こそちゃんと言う。そう誓って床に着く。

 

でも駄目。目を見るといえない。だってお仕置きされるかもしれないのに。ちゃんと報告しなかった事だけいって済んだら良いのに。お仕置きはやっぱり嫌。

 

そうこうしているうちに一週間がたって益々いえなくなってしまう。

 

「社長。後でお話が。」

自分でも思いもしない大きな声が。お昼に行く社長を呼び止めた。

「じゃあ、午後もどってきたら。」

それだけ言って出て行ってしまった。

いっちゃった。一週間もいえなかったこの一言を今日ついに、言っちゃった。言ってしまうとやっぱり言わなければよかったかもと憂鬱になる。

 

「部屋で聞こうか。」

戻ってくるなり、私の机の前を通りながらそれだけ言うと、ずんずんとおくに歩いて行ってしまう。

 

「失礼します。」

「この間のクリスマスパーティの事。すみませんでした。」

「その事?」

「もういいよ。」

「でも。」

「でも?」

「正直に報告しなかったから、社長の顔に泥を塗ってしまって。」

「そう。ちゃんと分かっていたんだ?」

「最近の子は宇宙人のようでね。僕には。ちっとも響いていないのかと思っていたよ。」

「すごく悪かったって思っています。」

「じゃあ、自分でそういわないとね。なんとも思っていないように思われるよ。」

「はい。」

「じゃあ、行ってよろしい。」

「あ、でも。」

「何?」

「今までだったらお仕置きされてたし。」

「何?お仕置きされたいと。」

「だって、見捨てられたような気がするから。」

「自分の悪さの分だけ、覚悟しているってわけだ。」

ニッコリ笑う顔を見て途端に後悔。

あ、やっぱり、嫌かも。

「正直だね。自分で言った言葉後悔している?」

「そんなこと。」

わかりやすい。わかりやすくってつい苛めたくなる・・・。俺もまだまだだな。

「そんな事ないのなら、じゃあ、厳しくお仕置きしてもいいのかな?」

「厳しくって・・・・どれくらい?」

「どれくらいか試してみるか。」

そういって口元だけで笑っているけど、実はとっても怖い社長様は机を指差しているわけで・・・。

「この間はお尻を出したんだったね。」

「・・・」

恥かしい。

「今回はどうしようか?」

どうしようかって。そんな。

「このままで。」

「駄目。甘い考えの罰だ10発追加。」

「そんな。」

言えるわけ無いじゃん自分でなんて。ありえないでしょ。普通。

「口答えした分10発追加。」

うえ。オニ。

「さ、こっちは向かなくてよろしい。さっさとお腹をつけて。」

そういってスカートが捲くられる。

「下着は下ろしていいんだね?」

はい。

「何?聞こえない。」

パチン

う。予想もしてなかった一発をお見舞いされて、顔が真っ赤になる。

「はい。」

「じゃあ、じっとしていて。」

するするとモモのあたりまで下着が下ろされるのがはっきりと分かる。じっとしているものの、恥かしさもそろそろピーク。

「痛いからね。」

パーン パーン

この人どうして『痛いからね。』とかって言うんだろう。その一言が深く響いて、恐怖心が増す。

「痛い?」

「痛い・・です・・。」

「まだまだ序の口なんだけどな。」

パチン パチン パチン パチン。平然とお仕置きは続く。

「さてと、お尻もあったまってきたから、上司に報告しなかった分のお仕置きをしよう。」

パチン パチン パチン

「いた。痛い。」

「痛いね。そうだろうね。さて、次は内緒にしていたぶん。」

パチン パチン パチン

パチン パチン パチン

そろそろ、耐えられない。

「お尻が痛い。」

そういって足をモゾモゾさせる。

「動くんじゃないよ。」

腿にパチンと一発。

「痛い!」

「そう。お行儀が悪い所があったらそこも教えておく必要があるからね。」

「次は20発追加になった分。」

「反省してるから。もう堪忍してください。」

「振り向かなくていいから。」

「まだまだ駄目だよ。自分で覚悟してきたんじゃなかったのかな?」

そうだけど、そうだけど、いざ始まってみるととても耐えられない。

「だって。痛くって。」

「お仕置きだからね。」

「でも思っていたより痛いし、多いもん。」

「じゃあ、反省がたりなかったってことだ。」

「その分もしておこう。」

ああ、自分で自分の首を絞めてる・・・。

「ごめんなさい。もうしません。ちゃんと報告します。ごめんなさい。」

そればかりたぶんだけどくりかえして、いつ終わるとも知れぬお仕置きに耐える。

「痛いクリスマスプレゼントは悪い子のもとに届くって決まりだからね。」

そういえば、ちょうど25日。

「来年はいい子のプレゼントがもらえるといいな。」

ちぇ。子ども扱い。

ちょっと拗ねた。

「よし。いいだろう。」

拗ねたまま戻ろうとしたら、

「反省の色が見えないのなら、もう一度してもいいんだけど。」

「い、いいえ。十分反省しています。失礼します。」

そそくさと退陣。なんて事を。恐ろしい。

 

千絵が出て行った後,ふーと忍び笑い。

やっぱりちょっとからかいたくなる。ま、今回は自分からお仕置き覚悟と言えた分、大目に見るとしよう。

しかし、中川さんも俺にこんな事させるなんて、本当にいい性格しているよな。 

 

 

 

 

 

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