「資料持ってきて。」

そういわれて焦った。昨日、修正しておくようにと印のついている資料は手をつけていない。『明日の朝には欲しい。』と期日をはっきり言われていたのに、どうしようとオロオロするばかり。

「喜多見さん、早く。」

「はい。」

そう答えたものの、見せられるものなんて無い。

 

いつまでも立っているだけではいけないと、叱られるのを覚悟でドアをノックする。

「できてないんです。」

 

「どういう意味かわからないんだけど。」

「あの。だから、まだやってないんです。」

 

「一つ、期日は必ず守る事。」

「はい。」

「一つ、ミスしたときは自分から報告する事。」

「はい。」

「指摘される前にだ。」

「はい。」

「すみません。」

「やれやれ、さて、どうするか。」

 

目がバッチリあってしまう。私はすぐに、力なくうなだれる。

 

「首にするか。」

「困ります。」

「首は困ると。」

「はい。」

「でも、言葉で言われても理解ができないとなるとね。」

 

となると、やっぱり???

「どうする?」

どうするっていうのは?

「・・・・」

「このまま部屋を出て、明日からはもう出社しないか、この場でお仕置きを受けるか。」

「ここで働かせてください。」

私には後がない。他に行くあてがないのだから。しかもやっぱり悪いのは私。昨日残ってやろうと思っていたのに、中川さんと約束があって帰ってしまった。朝早く起きてやろうと思ったのに、結局、いつもの時間に起きてしまった。後悔しても仕方ないけれど、やっぱり、やる事やってからにすればよかった。

 

「じゃあ、机に手をついて。そう。この間みたいに。」

「それくらいは覚えているだろう?今日で2度目だ。」

 

嫌味の言葉もあまり聞こえないくらい、恥かしさで頭がいっぱい。

「いい?スカートをあげるよ。」

「え?困ります。」

急いで姿勢を戻す。

「手は机について。」

「そう。姿勢はくずさないよ。」

スカートはおろか、パンツまで下ろされた。

恥かしさで、顔は紅潮し、しかも、膝が震えてる。

「さて、資料が見えるようにここにおこうか。」

にっくき、私の赤く印についた書類が目の前に置かれる。目をつむったら、

「ちゃんと見なさい。原因は誰にあるのかはっきりと自覚できるようにしているんだからね。」と容赦ない。

「あの、下着はせめて。」

「恥かしい?」

「そりゃあ。」

こうして口にしているのも最大の勇気を振り絞っているのに。恥かしいどころの騒ぎじゃない。

「一応ある意味ボランティアとでも思わないと、人の教育はできないと思ってね。」

「愛の鞭って言葉聞いたことあるだろ?」

パチーン

「痛い!」

パチーン パチーン

いきなり始めるなんて。酷い。

「まって。」パチーン パチーン

「待ってください。」パチーン パチーン

 

待ってって言ってるのに。

パチン パチン パチン パチン

なんだか全てが悲しくなって泣けてくる。

目の前の報告書が涙でにじむ。

パチン パチン パチン パチン

やめてって言ってるのに。

「痛い。痛いです。痛い!」

痛いって言ってるのに。もうヤダ。

パチン パチン

パチーン

 

「よし、いいだろう。」

お仕置きが永遠に続くかのように思えた、羞恥のひと時がようやく終わった。

「痛―い。」

その場に思わずしゃがみこむ。

「下着をあげて、さっさと仕事に戻りなさい。」

「それと、30分後にその資料を仕上げて持ってくるように。」

「え。そんな。」

「いつまでも、学生気分でいられては困るね。」

「さ、さっさといく。」

そういって仕事に戻ってしまった。

「出来てなかったら酷いよ。」

そういわれたら、引き下がるしかない。

 

痛いお尻をかばいながら、もちろん到底庇い切れないわけだけど、PCに向かう。

受付け正面だから、お客さんが来たら泣いていたの分かってしまうだろうな。なるべく下向きに、そして、急いで仕事を仕上げた。社長の仕事はもう二度と後回しにしないと心に誓った。

 

今日も閻魔様のノートをつけなくては。

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送