『閻魔様からのお仕置きノート』
三木ちゃんからそう呼ばれているノートは普通の大学ノート。これに時々やらかした失敗について、どんなお仕置きをもらったのか。何がいけなかったのか書かなくてはいけないノート。閻魔様が見ることは無いのだけど、付け忘れたのがバレタらどんなに恐ろしい事になるのか、想像する勇気も無いので、仕方なくつけている。
事の発端はこうだった。
「どんな事も忘れないようにメモしなさい。」
そういわれていたのに、通勤にも、仕事にも、環境にも。何から何まで慣れないでいた私は、焦って、杉山さんのスケジュール帳に会議の時間を書き込むのを忘れてしまった。幸いにも社内の会議だったので調整はついたものの、大目玉。これが社外だったらどうなるか。信用問題だと。
「どうして、スケジュール帳に書きもれてしまったのか、それには何か原因があるの?」
会議が終わった後、やさしく、杉山さんの部屋に呼ばれ、直立不動の私に問いかける。
「言われたときにメモを取りませんでした。」
「それから、もう一つ。君は僕の秘書だ。ミスが発覚したときに迅速にそれをカバーしようと行動が取ったのかな?」
ハッとなった。私はパニックになって、慌てふためいている所、丸山さんが助けてくれたのだ。
「いいえ。」
蚊の泣くような声で答えるのが精一杯。
「今週は小さなミスが続いているようだね。僕が注意したくらいでは馬耳東風って言う所みたいだから、厳しく罰するか。」
「首にしないで。」
ふっと笑ってしまう。この子は最初に首にするといったのがよっぽど心に引っかかったみたいだな。
「まだ、首にはしないよ。でも、ちょっと痛いかな。我慢できる?」
「なんでもします。」
本当にその時はなんでもって思ったのだけど・・・。
「じゃあ、机に手をついて。」
「え?」
「いいから。」
「しっかりお腹もつけたほうがいいかな。」
これって?なに?不安がよぎる中、
ピシーってお尻に痛み。
痛くって起き上がろうとすると、
「そのままの姿勢でいなさい。」とすかさず背後から声が。
「いい?悪いことをしたらお仕置きだ。」
「お仕置きは痛いよ。そうでないと何度もしでかしそうだからね。君の場合は。」
「もう二度とミスしません。」
「そう。最初に君の口からその言葉を聞きたかったね。じゃあ、10発我慢しなさい。」
そういって、何度も平手で叩かれた。ショックと誰かもし入ってきたら・・・。そう思うと、いてもたってもいられない羞恥心で一杯になる。そもそも、誰も勝手には入ってこないまでもこの音って聞こえているんじゃないかしら?いくら社長の部屋が立派とはいえ。もし聞こえていたら・・・。
「上の空のようだね。」
ピシー ピシー
「そんなんことないですー。」
「じゃあ、涙を拭いて。」
ティッシュの箱をもらってお説教。今後はむき出しのお尻に叩くって。それから、今日の悪かった事を忘れないように、自分でノートを買って今日のことをちゃんとメモに残しておくようにと。
「正直でいなさい。いいね?」
「はい。」
「申し訳ございませんでした。いえるね?」
「はい。」「申し訳ございませんでした。もう2度とこのようなことが無いように注意します。」
「よろしい。じゃあ、仕事に戻って。」
泣きべそかきながら、手紙の整理をしていたら、丸山さんが、紅茶を入れてくれた。いつもは私の仕事なのに。丸山さんはいつもそっと優しい。女性ならではの気配りってこういうことなのかな。仕事も出来て、やさしくって、私の憧れの人。
それから、30分後、閻魔様のノートが私の机に届けられた。
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