物事に“期限がある”と思うとストレス。
 
あれ、言われているあれやらなくちゃと思いながらも日々他の雑多な仕事に終われ後回しになっちゃってる。その期限付きなる仕事の期日が迫ってくる。
 
「ハァー。ストレス溜まる。」
家でため息と共につぶやく。
働きやすい職場だと思う。皆良い人ばかりだし。やさしいし。
社長に時々“お説教”されるのは困りものではあるけれど、
切れ者の社長の仕事そばで見ていて尊敬することも多い。
 
缶ビールを一人で空けて晩酌をするだけで、なんだか気分が開放される。
 
 
 
 
 
 
 
 
そして―外の明るさで我に返る。
えっ・・・。いま。な・なんじ・・・?                 
 
!!
 
突然眼が覚めるものの、心が着いてこない。心臓がバクバクいってる。
はちじ・・・。
 
間に合わないよ。だっていつも八時に家でてるのに。
どうして起こしてくれなかったの?
といつも先に出社する同居人三木ちゃんを恨んでみたり・・・。
もう、パニックで何したらいいのか分からないんだけど、
頭だけはっきりと『マズイ・ウゴケ』と指令を出してフル回転している。
 
休むか・・・。
でも締め切りの仕事があるし。午後からでも出社せざるを得ない。
そうだ。病院行ったことにすればいいや。
9時になったら遅れると会社に電話しよう。
そう思ったら、ようやく安心して、水を飲む元気が出てきた。
 
 
 
丸山さんが「お大事にね。」とやさしい声で電話応対してくれた分心苦しいけどやむをえない。「社長には言っておくから」と。
ちょうど社長がいなかったというラッキーさもあって、直接遅れる連絡はしないで済んだ。
 
ちょっと具合悪そうにしていった方がいいかな?なんて、作戦練っていざ出社したら、机の上にメモが。
 
―――出社したら顔をだすように。―――
と書いてあるそのメモ。
 
なにやら不穏な感じがする。
 
 
やましいさがあるので、できるだけぼろが出ないようにと心して社長室へ向かう。
 
「失礼します。」
 
私の声で、PCから顔をあげて、腕を組む社長。
う〜ん。なんか威圧的。
 
「具合は良くなった?」
眼鏡の位置戻すため、スーッ鼻先を押さえる。
 
「はい。」
 
「近所の病院?」
 
「は、はい。」
 
「珍しいね。個人の病院っていうのはね、木曜日は休診日なんだけどな。」
 
げっ。
 
ニッコリ笑ってバッサリ斬る。いつもの手だ。
 
「普段健康なんだね。」
「正直だな。『マズイ』って顔に書いてある。」
 
ふふっと社長が笑った。
逆に怖い。
 
 
「あ、あの。」
 
「はい?」
 
「あの。すみませんでした。」
 
「困るねー。」
 
社長はそういったっきり何も言わない。もう行っていいってことかな。
このまま部屋から出て行ってもいいのかな?
「仕事に戻ります。」
 
「おやおや。誰が戻っていいと言った?」
 
やっぱり?この展開って・・・。
 
でも、社長は何も言ってくれなくって、腕組んだまま。
 
「いつまでも甘い顔はしないからな。」
 
それって、最後通告だったり・・・しますか?社長。
視線が合った瞬間、私の推察は確信に変わった。
甘い顔なんてしてもらったこと無いと思うけど。
 
「ごめんなさい。もうしません。」
「あたりまえだ。」
 
「深く深く反省しております。」
 
「よろしい。」
 
ほっとしたのもつかの間。
「言う事あるでしょ。」
 
う。言いたくない。
 
泣きそうだもん。
 
で、でも、言わなかったら東京にいられない。
 
「お仕置き覚悟してます。」
 
「顔見て言いなさい。」
 
 
「意地悪」
 
「なんだと?」
 
地獄耳め。
 
「な。なんでもないです。お仕置き覚悟してます。」
 
「では、どうぞ」
 
そういって応接ソファ―の方へ手を引かれる。
お仕置きやだから嘘ついて病院いったことにしたのに、結局お仕置きじゃん。しかも。あきらかにまずいよね。
 
パシン
 
「言っておくけど、今日は怒ってるからな。」
 
「やだ〜。だって、だって、悪気はなかったんです。」
 
パシン パシン
 
「いや。確実にあっただろ。嘘つくんじゃない。」
 
パシーン
「痛いの、追加されたくなかったら、嘘つくんじゃない。」
 
「いったいっ」
 
「痛いよ。痛い。痛い。」
 
完全に無視を決め込んだ社長。容赦ない。
 
「病人でもないんだ、これくらい平気だろ。」
 
「寝坊の理由はなんだ?夜更かしするなっていってあっただろ。」
 
「ちゃんと寝ました。」
 
「じゃあ。どうしてだ?」
 
手が止まったときには遅かった。自らのボロで首を締めたのを悟る。
 
「言えません。」
 
パシン パシン パシン パシン
 
ひーん。痛いよう。社長のバカヂカラ。
 
無言のお仕置きって怖いよう。終わってくれる気配もない。
でもこんな理由言ったらただじゃ済まされないよ。
絶対に、「まだ未成年だ!」って、もっと叱られる。
 
「ごめんなさい。」
「もうしません。」
 
「いやあ。」
 
「痛い。限界。仕事できなくなる。」
「もうしませんから〜。」
 
「仕事ができなくなるのは確かに困るな。」
「さっさと今日までの期限のものをもって来るように。」
 
やっと解放してもらった。
 
 
今日は木曜日。
 
思わぬ落とし穴だった。
はあ、お尻痛い。鬼。社長思いっきりなんだもん。

 

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