ちょっとコーヒーが続いてた。
しかも、悪い事にあまり食事しないという日も、コーヒーだけは毎日濃いのを飲んでいて。
今日、仕事中についに、具合が悪くなってオフィス下のクリニックに行かされた。
“大丈夫です”と言って渋ってみたら、物凄い怖い声で「今すぐ行って来い」と命令系だったから、怖くてすぐに行ってきた。
診察結果は軽い胃炎というのが簡単な症状の説明だった。
すごく心配そうに戻ってきた私を見つめて、「どうだった?」って聞いてくれた時、
ごめんなさい。と心の中では素直にいえたのに、叱られるのではないかと怯える余り、
余計に、悪い方向へと展開してしまった。
『別に大丈夫です。』と言い張る私から症状を聞きだすと、
「胃に悪いのもいけないから、もう今日はいい。」
「もう平気です。」
「というかストレス受けないような生活に戻った方がいいな。」
「それって?」はっとなって顔を見る。社長の 顔は冗談を言っているような顔つきではない。そんな。なんか言ってください。そう思いながら言葉を待つ。
最初は、「大人なんだから。社会人として、健康管理自分でするのが基本だろ。」と
いつものようなお説教で始まっていたのに。
「分かってるだろ?中川さんから頼まれた大切なお嬢さんの胃を悪くさせるような職場環境であったという俺の反省だ。田舎に帰った方がいいな。辛い思いさせちゃったのは悪かった。」
「悪くない。」
「何か?」
「社長は悪くないです。私が悪かったんです。」
「だから社長のせいじゃないし、首にしないで。」
そういって後から後から涙がこぼれる。
「わかったから、少し落ち着いて。」
今日の私は精神が不安定。
朝からそうだった。何か猛烈に悲しかったり、猛烈に焦って自分で自分を追い詰めたり。
「今日の朝ごはん、食べてきた?」
「飲み物だけ。」
「君の食生活のせいなのかな?」
「僕には専門的なことは分からないけどね。」
「じゃあ、一ヶ月、規則正しい生活を送って、それで問題ないようなら続けてもいい。」
「だけど、もし、体が治らないようだったら、僕は君のお兄さんに頭を下げなきゃいけないと思ってる。」
「社長は悪くないのに。」
「それでも僕には預かった以上責任があるから。」
「心配そうな目はしなくていい。」
「ただ、無茶はしない事。自分の体を大切にする事を約束してくれ。」
「はい。」
なんか、ホッと社長がため息をついたような気がした。
「じゃ、膝の上においで。」
笑顔に見とれて聞き流した。だが、聞き流せる内容では無かった。
頭で一度考えて、気がついたら絶叫してた。
「えええ!」
「ええ?じゃないだろ。」
「だって。お仕置きって事ですよね?」
「言わずもがなだな。」
「だって、今の話の流れでは、どこをどうとってもこの流れには・・・。」
「甘い。僕を誰だと思ってる?」
「来なさいと一度言われて過去、その言葉に従わなくって大変な目にあったんじゃなかったっけ?」
「・・・」
何もいえないでいると、さらに心臓止まるような恐ろしい言葉が。
「閻魔大王のノート見れば思い出すだろ。」
ふっと笑いながら言ったのだ!!!
思い当たるルートは同居人三木ちゃん→丸山さん→社長のルートだけだ。
ありえない・・・。お喋りだ。みんな。どうしてそんな事いっちゃうの!
内緒なのに。そんな名前付けてるのばれたら、私の身は保障されないのに。三木ちゃんの
お喋り!!しかも、大王だなんて。尾ひれついて伝わってるのは明らかじゃない。
「あ・・・の・・・、その名前は・・・。」
ニッコリ笑顔だけだった。返ってきたのがそれだけの方がより怖かったり。
「今日は特別だ。もう一度だけ言ってあげよう。膝の上に来なさい。」
「は、はい。」
そうして私は恥かしさで、できれば消え入りたいと思いながら、膝の上に乗ったのだ。
「分かってると思うけど。」
そういいながらスカートが捲くられ、パンツが下ろされる。
パチン
パチン
「な、何がでしょう?」したてに、早めに不明点は明らかにすべし。いつもの社長の口癖なので、もっと叱られるのを覚悟でオソルオソル聞いてみる。
「お仕置きされてる理由だよ。」
優しい声。
でも、内容はとっても難解だった。
もし、枕元、眠りに就きそうな時にそんな声を聞いたなら、そのまま眠りにつけそうな柔らかなトーン。
でも、でも。
「あの――。」
その間も勿論お尻は痛い。
今日の社長はそれでもやっぱりいつもより、寛大かも。いつもならお仕置きの理由がわからないなんていおうものなら、烈火のごとく怒って、お仕置き倍増なのに、今日は優しく教えてくれる。
「体を大切にしなかった反省はしてるの?」
「してます。」
「すみません。」
あわてて答える。お尻痛い。
パシン パシン
社長の気持ちが分かるから、私も「 痛い 」とはいえない。言えないでぐっと我慢。
どうにか、我慢してるというのに、涙はこぼれる。
何か心の底に触れる言葉があったみたい。
感情がコントロールできなくって、涙が止まらない。
ひっく ひっく
恥かしいのに、明らかに泣いているのが伝わってしまう。
「ごめん・・な・・さい。」
しゃっくりで上手くいえないのに、分かってもらえたのかな。手が止まった。
「本当に心配したんだぞ。」
そういいながら、私を抱き起こし、髪の毛をなでてくれた。
まるで小さな子をあやすかのように。
子ども扱いに恥かしい気持ちが強かった一方、なんだかとても甘やかされている気分になった。久しぶりに擁護されている空間が自分の周りをただよった。
「すぐに元気になります。」
そう宣言して仕事に戻った。
という終わりだったらとっても格好よかったけど、社長が今日は仕事はいいというので、
早退させてもらった。
だから今日の事は今日中にとばかりに、閻魔様のノートにこうして書いている。
自分の気持ち
社長は怖い
社長は仕事が出来る
社長は人の事、良く見てる。
社長は時間が無いはずなのに、何でも知ってる。
そして、私は社長の事を色々な場面で色々思うけど、基本的にとても尊敬している。
『社長は根はいじめっ子体質。』これも書こうと思ったけれど、見せろといわれると困るので私の心の中だけにしておいた。
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