ごまかせない

 

 どうしよう。嫌だな。往生際が悪いな私も。でもお仕置きだってはっきりわかっているのに、覚悟なんてできないよ。涼先生は容赦しない厳しい人なんだし。

 

 今か今かとドキドキしながら、なんて言おうかと考えていると、ようやくドアが開く。

「こんにちは」そういっていつもと変わらず笑顔。きっと、私はさぞかし引きつった顔に

なっているだろうな。

「こんにちは。」「通知表もらってきました。」

本当は自分からちゃんと言おうって練習したのに。それしか言えなかった。

「奈保子。」

「奈保子。返事は?」

「はい。」

「顔を上げてごらん。」

そういって、顔をのぞきこまれた。

「もう一度。」

そういって、通知表をもどされた。ちゃんと目を見て渡せってことなんだ。

「通知表がでたので、お見せします。」

うつむかないようにしてみたものの、視線は定まらず、目が泳いでしまう。

今度は黙ってうけとると、さらっと左のページ、右のページって見て、ちょっと通知表をふせると、

「言うことがあるんじゃないの?」の一言。

 

う。図星。

 

「はい」

「僕が痺れを切らさないうちにおねがいしたいね。」

「はい」

そうはいってもやっぱり言えない。

「隠し事、嘘をついた時はどうなるかもうすでに教えてあったと思うけど?」

「自分でちゃんと言うって約束もしていたね?」

「……」

 

「ひざの上に来なさい。」

「いや。まって。言うから。」

「聞こえたね?二度は言わないよ。」

自分の意気地の無さをのろっても仕方ないけど、悪いほうに進んでいることは間違いない。

間違いなく、完全にお怒りモード

のろのろとひざの上に乗ると、スカートはパッと捲り上げられ、パンツも下ろされた。恥ずかしさでこぶしに力が入る。

黙ったまま、パーン パーン とお仕置きが始まる。

「ごめんさい。ちゃんと言うから。」

 数発叩かれただけでもう泣きべそかいてお願いしてしまう。そんな甘えた態度はとっくに見抜かれていて、たっぷりとお尻があたたまってようやくひざから下ろされる。多分、20発は叩かれた。

「正座。」

痛いお尻に足があたり、もぞもぞとなるべく痛くないようにとしていると、上から頭をぐっと押され、

「ちゃんと座る。」と痛み倍増の仕打ち。

 

開いた通知表をもう一度手にとりなおしてチェックを入れられる。

「で?」

「来学期はもう少し数学がんばります」

ああ、本当はこんなこと言うはずじゃないのに。

「それで終わり?」

「いえ。」

「奈保子。ひざの上に乗ってこれかい?それならば、甘やかしすぎたってことだね。」

「あ。待って。まだあります。」

甘やかしすぎたって?どういうこと。ぜーったいにこんなに怖い家庭教師何処探したっていないのに。なんていいだそう。

なかなか言い出せないでいると、

「生徒手帳を出すように言わせる気?」

ああ。もうばれていたんだ。ちらっとしか見てないはずなのに。だったら最初から言えば良かった。

「早退っていうのはなに?」

「体調理由じゃないだろ?なんで早退したのか言ってごらん。」

 

「映画の舞台挨拶見たくって。早く並ばないと入れないと思ったから。」

 

「親から早退届が必要なはずだね?」

「生徒手帳は誰に書いてもらった?」

「友達に代筆頼だ。」

ポツリポツリと仕方なく答える。

「顔を上げなさい。」

 

 そう、通知表、成績は特に問題なかった。だって、あんな鬼先生に習っていたら、成績は間違いなく上がるって。数学だって、唯一の「3」だっただけで、後は4と5という結構誉められた成績だったんだもん。だけど、早退1ってついている生活面の所はごめんなさいをしないといけなかった。通知表はかなりいけているほうだし、もしかしたら、気づかないかな。なんてひそかな期待をしていたんだけど、やっぱ、駄目だったか。

 悪さしなければとびっきり甘いマスクでやさしくって、言うことないのに、調子に乗って、悪ふざけが過ぎるとたちまち鬼に豹変。ちょっと叱って欲しくってなんて甘えてみたらたちまち後悔。本当に反省するまでみっちりお仕置きされてしまう。もう一年も付き合っているから最近はどういうことしたら、叱られるかだってみっちり体が覚えている。今日だって、早退した次の日にちゃんと告白しようと思っていたのに、怖くて言えなくって、先延ばしにしてた。すぐに言わないまずいと分かっていたけど、今日になってしまった。

 

それでも、通知表渡すときにちゃんと自分から言おうと本当に、さっきまでは思っていたけど、結局できなかった。まずいよなー。

 

「この件についてはたっぷりと反省する必要があるね」

うう。恐ろしいお言葉。でも反論はできない。だって奈保子が全部本当に悪かったんだもん。

「はい。ごめんなさい」

「言わなきゃって思ってたの。でも怖くって言えなかったの」

「自分でしたことは自分で責任を取りなさい。お仕置きが怖くって逃げたというのなら、逃げたらどうなるかもちゃんと教えておこう」

「あ。待って。ちゃんとわかっているから」

思わずすがり付いてしがみついた私の手をゆっくりと離すと、

「正座」それしか言ってくれない。

涼先生、超怒らせちゃった。どうしよう。

 

「順序立ててちゃんと教えてあげるから、ひざの上に来なさい。」

穏やかなしゃべり口調がますますもって怖い。ついに宣告。ちょっとしびれたせいで足元がおぼつかない。教えて欲しくなんかないのに。

「お仕置き覚悟の上での行動なんだろう?」

「だったら、ちゃんとすぐに自分で私に言いなさい。」

バチーン 

痛い!嘘。久しぶりのお仕置きは飛びっきり痛い。さっき叩かれたのなんて目じゃない。我慢。と思った矢先に続いて2打目。3打目とビジビシ非情なまでに追い討ちをかけてくる痛さ。

「痛いっ。」

思わず我慢できずに声を漏らすと

「悪いことをしてお仕置きされていて痛くない訳がないだろ?」

「ちゃんとお仕置きの意味が分かっていないようだから、わかるまでしっかりと躾しよう。」
バチーン バチーン そういって手は休まることなく、お尻にはその度にビリビリした痛み。

「ごめんなさーい。わかってます。反省してますぅー。」

 言わせちゃいけない言葉を言わせてしまった。先生はお仕置きが始まって、すぐ泣きべそかいたりするのは絶対許してくれない。だから、ちゃんと我慢しようとしたのに、余りに痛かったんだもん。分かっていたのに我慢できないほど痛いよ。痛いよ。痛いよ。

「ずーと隠していたこと。」バチーン バチーン

「今日に至ってはごまかそうとしたこと。」バチーン バチーン

「反省の色が全然見えないこと。」バチーン バチーン

「甘えた態度。」バチーン

「僕が何故こんなに厳しくお尻を叩くかわかる?」

痛いのこらえるだけで精一杯で、質問に答えるのなんて無理。黙っていると、叩かれる速度が速まる。

バーン パーン バーン パーン

「もう堪忍。痛いよー。」

バーン パーン バーン パーン

「反省してるから。ごめんなさい。」

バーン パーン バーン パーン

「反省してるがあきれるね。僕には全然反省しているようには見えないよ。」

お尻が燃えるように痛い。

「ごめんなさーい。」「もう。痛くって耐えられないよー。」

バーン パーン それでも手はちっとも止まらない。

痛い所の上にまた バーン パーン と叩かれていくので、痛さが倍増するかのような感じがする。

バーン パーン 

「まだだ。」

そういって、バーン パーン バーン パーン と お尻の下のほうを、嫌だというのに叩かれる。痛くって逃れたくって、もぞもぞともがくと、ビシッと腿を叩かれ、

「お仕置きを受ける態度も躾なおしが必要ならそうやって、じたばたしていなさい。」

と言って、またお尻をバーン パーン と叩き始める。

ぐっとこらえて痛みに耐える。これ以上さらにお仕置きの理由が増えるのはなんとしてでも避けたい。バーン パーン 耐えるけどこれまた痛くってすぐに弱気になってしまう。

「反省しています。本当です。」バーン パーン 

お仕置きをどうやったら終わりと言ってくれるのかわからなくって、必死にお願いする。

「自分で悪かったと思えるまで終わらない。そういってあるだろう。」

バーン パーン 

今日はとびっきり厳しい。それは間違いない。痛い。痛い。痛い。もうやめて欲しいのに。いつまでお仕置きする気なんだろう?そう思っているとまた体が逃れれようと動いていた。

バーン パーン バーン パーン 

背中に回された右腕を上からがっちりと押さえられ、何も言わずに先生は叩きつづける。

必死に「ごめんなさい。」「もうしません。」そればからり繰り返していた。真っ白になった頭でもうやめて欲しいとかは考えられなくなっていて、ただひたすらそう繰り返していた。

バーン パーン バーン パーン 

いったいいくつ叩かれたのかなんてもはやわからなかった。そうして、

「10数えたら終わりにしよう。」

パチーン と叩かれたけど、数えるなんてできなかった。

痛くって涙がじわっとあふれて、悔しかった。

「ごめんなさいは嘘だったの?反省してるかと思ったが、足りないのならそのまま泣いていなさい。」

必死でもがいて「まって」「まって」と繰り返す。

こんなに厳しいのなんてひどい。そう思ったけど、でもやっと終わりになるかもしれないのだから。

「本当にごめんなさい。」

「じゃあ、20数えなさい。」

バチーン

「イチ」

最初は10だったのに。鬼。鬼。オニー!

バチーン

「ニイ」

 

やっと20が言えてひざから下ろされたけど、さらにコーナーに立たされた。

わんわん悔しさもあって泣いていたけど、ごめんなさい。ってちゃんと思っていた。

本当にごめんなさいと思えるまで絶対に許してくれない。

どうして、分かってしまうのかすごく不思議なんだけど、いつもほんとうに反省するまで厳しいお仕置き。ごまかせるかと思ったのがそもそも、大間違いだった。ずるしようとするなんて、叱られて当然の事。

 先生にはなんでもわかってしまう。改めてそう思った。

 

痛いお尻をかばいながら椅子に座ると、

「成績はなかなかなものだ。」といって頭をなでてくれた。痛かったのが終わってほっとしたのと、誉められた嬉しさで目頭がまた熱くなった。泣いたら笑われるかと思ったけど、よしよしと頭をなでられて、こらえきれずに

「えっ。えっ。」としゃくりをあげながら泣いてしまった。

 

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