「放課後教員室まで来なさい。」

 

 

 

英語の芝沢に呼び出されて、先生の机まで行くと、

「指導室があいているから」とそっちにと連れて行かれる。

 

「さて、今日の英単語のテストで聞きたいことがある。」

 

 

 

ドキン。

「テストするのは、自分の力を試すためのもので、カンニングして良い点とっても

ためにならないのは、今更言う必要も無い事だと思うが。」

 

ひえー。ばれてた・・・。顔が赤くなるのが自分でもわかる。

 

「僕の言っていること、わかるよね?」

 

「はい。すみません」

 

「二度としない?」

 

「もうしません」

しょんぼり。小声で反省。

 

「じゃあ、連絡帳出して。」

そういって、書かれてしまった。連絡帳。

嫌だった。差し出すのなんて。

できれば、謝ってすませたかった。でも。出せって。先生が。

 

「ちゃんと反省するんだぞ。」

 

「家に帰って自分でちゃんと報告できる?」

 

「はい」

 

そんな自信はなかった。手渡された連絡帳。涼先生 きっとものすごく怒るもん。

連絡帳さえなければ、こんな事実、闇に葬るに決まってるのに。

 

 

 

 

家に帰ると、連絡帳を母に見せる。

「まあ。」

 

「もうしないから・・・。だから、涼先生には言わなくても・・いいでしょ?」

 

「いいえ。いけません」

 

 

…やっぱり…

 

 

「カンニングだなんて」

 

母はプリプリしながら、家でも厳しく叱りました。今後は二度とこのようなことが無い様にいたします。と書いて渡してくれた。

 

「いい?もうしないのよ。何の為に家庭教師つけてるんだか。」

 

「はい」

 

 

 

時計を見ると6時5分前。そう思った途端に玄関のチャイムがなる。

来たー…。

いつもどおり時間より授業開始よりちょっと早めのお出まし。

 

「こんばんは。」

感じのいい笑顔。きっといつものようなんだろうな。でもその顔がまともに見れない。

 

「おや?沙耶どうした?」

こんな浮かない顔をしていれば誰だったそう聞いたであろう。

 

「沙耶。自分でいいなさい」母に即されて、

 

「・・・」

仕方ないよね。ああ。

視線をそらせたまま。ダイニングテーブルの足を睨みながらしょうがなく告白する。

「今日、英単語のテスト、カンニングしてたのが見つかって学校の先生に叱られた。」

 

「今、カンニングっていった?」

 

抑えた声が余計に怖い。

 

「・は・・・い・・・」

 

 

ふーっとため息が聞こえた。

 

「今日は授業前にお仕置きする。反省するまで、許さないからな」

 

「先生。もうしない。誓うから」

 

そんな沙耶の言葉を無視して、沙耶の部屋へ連れて行く。

 

「本当に、本当に反省してる。」

 

足を踏ん張るようにしているのに、かまわず、私の部屋へ導かれる。

でも人間切羽詰ると不思議な行動するっていうじゃない。今の私がまさにそう。

 

ふえー。物凄い怒ってる。涼先生。

完全に怒ってるもん。ま、当然だけどさ。

 

 

顎をつかまれ、顔を上げさせられる。

「沙耶。なんでカンニングしようと思ったの?」

 

正面に真顔で立つ先生。抑揚のない声。

思わず視線を逸らす。

「どうして俺が怒ってるのか、反省してるなら分かってるはずだね」

 

「え?」

 

「悪い点とったらお仕置きだもんな?」

 

「自分で勉強する気になったら、悪い点数なんて取りようが無いんだけどな」

 

「お仕置きから逃げているうちは自分で自分のためにという気持ちが無いって事だ」

「勉強は僕のためにするわけでも、お仕置きされないためにするわけでもなく、自分の知識を増やそうという気持ちで進んでするものだよ。わかってる?」

 

言われなくったって、わかってる。

 

けど、けど、

 

気分じゃなかったんだもん。勉強の。

でもって、お仕置きされるの嫌だったんだもん。

 

「わかってる。」

 

「お仕置きは自分が悪かったときに、悪かった事を教えるためにしてるんだよ。

沙耶は口でいっても改善されないからね」

 

理論攻めなんて、卑怯だよ。

 

「やったか、やらなかったかだけだ。テストなんてのはね。」

 

「はい。」

 

「わかってるのなら、膝の上に来なさい。」

 

 

 

イヤイヤながらしぶしぶ膝の上に乗る。お手柔らかにと祈る気持ちは全く無視され、

パーン

「痛い!」

 

「沙耶が心から反省するまで今日という今日はたっぷりとお仕置きするからな」

「泣いた所で許さない」

 

 

パーン パーン

 

今、たっぷりって言ったよね・・

今、許さないって。許さないってどういう事???

 

「わーん」

「ごめんなさい」

 

「・・・い、・・・いぁ・・・ああ」

 

「覚えておきなさい。」

「俺は卑怯な真似してるの見つけたら絶対に許さないからね。」

 

何度ごめんなさいと繰り返しても、全然許してもらえない。

 

 

「今回が初めて?」

パチン

 

「え?」

パチン パチン

 

「カンニングしたのは初めてかって聞いてるんだ。」

 

パチン パチン

「痛い。」

 

「答え聞くまでやめないよ。」

 

「痛いー。わかった。言うから止めて」

 

 

「駄目。このまま、いいなさい」

そういってひっきりなしに痛みがお尻に振ってくる。

 

ひどい。横暴だ。

「前にも・・・やっ・・た・事がある」

 

「やれやれ。」

 

パチーン パチーン

 

「正直に言ったのに〜。」

 

「言ったからどうたって?言ったら終わりなんていってないしな。」

 

ずるいよ。

ていうか、これは取引じゃなかったんだ。気づけ。私。余計な事言っただけだ。これじゃ。

 

パーンという痛さは身体の芯まで響くようで、今までに体験した中でも、

飛び切りに痛い。

 

パーン

 

もう、本当に駄目。泣き声が出なくなるほど、声がヒーヒーとかすれて喉から息が

もれるような音しか出なくなる。

 

パーンと打たれたところに意識が集中するのもつかの間、

また別の位置で同じ事が繰り返される。

 

ようやく

 

「反省したか?」

とのお言葉が聞こえた。

 

「もうしません。本当。自分で勉強する。」

 

やっと声を絞り出してそれだけ言うと、お仕置き終了のお許しがでた。

 

「まったく、教える事が次々に沸き起こってくるんだな。」

 

トホホ。

とんだ一日になってしまった。

 

そういえば、今日は年号覚えたかテストされる日なのに、痛くって思い出せなかったらどうしよう。おしりはジンジンして熱を発している。

 

 

「さあて、勉強始めるぞ。」

 

オニ。

 

「頑張って勉強しないと、次に悪い点とったら大変だろう?」

 

そういっていつものように、長い睫毛をパサパサさせて、笑顔を見せた。

 

私には尖った尻尾が生えているのが見えるようだった。

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