さっきから、もう5分過ぎた。

 

来る。

来ちゃう。

 

もうすぐ来ちゃう。

 

涼先生。

 

10分でやっぱり来ちゃう。

 

さっきから、時計を睨みつつ、“何ていっていいのか”。先生と向かい合っている自分を想像するのに、いざ、自分が先生に言っている姿が想像できない。

 

自分の中で想像することを無意識に止めてしまっているのか、なんなんだろう?

ちっともどう言っていいのかという答えが見つからない。

 

『数考えておくように』

 

といわれてたけど、浮かぶのはダースベーター登場の時の音楽のみ・・・。

もしくはサダコ。

 

終わってる。

 

 

 

「こんにちは」

そういう声が玄関でする。

来ちゃった。

 

部屋から出て行ってコンニチハとご挨拶。

 

「宿題ちゃんとした?見せてごらん。」

 

いつもと変わらぬ(?)優しい笑顔。

いつもと変わらぬサラサラの髪でカッコイイ。

 

「あの。先生?」

「ん?」

「この間はごめんなさい。」

 

 

「あ〜やり残したことあったよね?」

涼先生はニヤニヤ

私はビクビク

 

「反省してるなら、今日は許してあげる。」

 

「ほ、本当?」

 

「反省してるならね。」

「してる。先生尊敬してるから。」

 

「そこまでいうといささか怪しさが出てくるけど、まあ、いいだろう。」

 

「さ、宿題見せて。」

 

そういって授業が始まった。

 

「叩かないけど、いくつお仕置きもらう覚悟してたの?」

 

ノートを見ながら、恐ろしい発言。

 

「5つくらいかな?」

 

「え?少なすぎるな。」

今眉間にシワがよったよ。見てはいけないものを見てしまった。

 

「あ、あの、先生はいくつ位・・・。」

 

10より少ない数字はありえないね。」

「でも、お仕置きはしないって。」

 

「反省してるならね。」

 

「してるもん。」

 

「ま、いいでしょ。その代わり、僕を舐めたりしたら痛い目にあうよ。受験生。」

「いいね?」

 

「はい。」

 

「よろしい。」

 

 

 

 

これが先週の出来事。時には仏の心もあるらしい。

 

 

 

 

すごくってわけじゃないけれど、それなりに興味はある。

予約の取れない占い師、当然よく当たるという噂の占い師。

その予約がやっと取れたと裕子から言われた日はなんと、涼先生が来る日だった

 

裕子には『一人じゃどうしても行けないから、お願い』と拝み倒されて、一緒に行く事になったが問題は、涼先生。

 

もしかすると、ぎりぎり家庭教師の開始時間に間に合わない。

 

本当の事話して許してもらえなくなってしまうとまずいので、裕子と一生懸命作戦を練った結果、もし、すごく遅れるようなことが万一あったら、裕子が母親の代わりに涼先生に遅れる、もしくはドタキャンの電話する事になった。

 

 

 

当日、占いの結果は二人とも良かった。

裕子は今の彼氏と相性もいいといわれて、ご機嫌。

しかし、私は『ひとついうなら、どんなときも、下手な工作をせずに正直に言う事。そうでないと、さらに悪い結果になる。』といわれてしまったのだ。もう気が気じゃなくって、他にそれ以降は何いわれたか覚えていない。

 

占いなんて、と思いつつも、後ろめたい気持ちがあるから不安。もう帰りたいのに、裕子はしつこく、もう一つだけっていいながら、なんか聞いている。

 

「裕子、あたしまずい。先に帰る。」

そういって、裕子を置いて、足早に家路に向かう。

 

「先生もういらっしゃっているわよ。」

息を整えるまもなく、バタバタと部屋にあがる。いつもの椅子に座っている、早く机に座りなさいと合図される。

「遅い。遅刻だぞ。」

 

駅から猛ダッシュしたけれど、涼先生の方が早かった。

 

まあ、時間どおりに始めるためにいつも少し早く来るから、涼先生が来る前に帰るのは無理かな?とは思ってはいたけれど、実際ドアを開けて、靴が見えたときにはブルーになった。

 

「すみませんでした。」

「なんだ?学校でなんかあったの?」

何も知らないから、優しい。

 

「怒らない?」

「沙耶」

 

じっと目をみて名前を呼ばれるともう凍りついてしまう。

まずった。

これじゃあ、悪いことしてきましたって、告白してるようなもの。

 

涼先生もすぐ分かったみたいというのが声の調子から感じられる。

 

「正直に言うから。」

すーと深呼吸。

 

「友達とちょっと帰りに寄った所があって、遅くなっちゃった。」

いっきにまくし立てるようにそれだけ言う。

 

「沙耶、もう一度、僕の目を見ていってごらん。それと、敬語をちゃんと使いなさい。」

 

涼先生は、いつもの椅子に腕組をしながら、こっちをじっとみている。

 

「ごめんなさい。遅れないつもりだったので、連絡しませんでした。すみませんでした。」

 

「人に言えないようなことをしているんじゃなければいいよ。連絡帳に書いて無くっても自分で言えるようになったんだ。よしよし。」

 

そういって頭をなでてくれる。

 

占い師よ、あなたは正しかった。

 

「15分の遅刻だ。15発だな。」

 

「え?するの?正直に言ったのに。」

 

「遊んでて、遅れたんだろう?」

 

「違うもん、一生の問題だったから。」

ちょっとオーバー。

 

「一生ね。それはまた重大な事だが、僕の授業に遅れてもいいほどの事だった?」

 

そういわれると辛い。

 

「授業に遅れるほどじゃあ、なかったかも・・・。」

 

「そうだろう。」

 

「いいわけ、口答えは好ましくないね。それと敬語をちゃんと使いなさい。これは2度目だよ。」

 

「はい。」

 

「膝の上に来なさい。」

う。やっぱりお仕置きだったか。

 

「正直に言ったのに?」

 

「正直に言ったからこれ位ですんだんだよ。嘘ついたり、偽装工作みたいな真似したりしたら、ただじゃあ、すまないだろうね。」

 

パーン パーン パーン

膝の上に乗ると、いつものように、下着を下ろされて、いつものように、ビシビシとお仕置きが開始される。

パーン パーン

 

「言っとくけど、親の振りして嘘ついて僕の授業をキャンセルなんてしようとしたら、友達も一緒にお仕置きだったからな。」

 

パーン パーン 

パーン パーン

「痛い。痛い。」

そう叫びつつも、その一言は恐ろしかった。お見通し?

 

たまたま結果的に今日はそうならなかっただけで、浅知恵ではあやうくそのシナリオだった。

 

「いった〜い」

パーン パーン

 

もしかして、何もかもばれているんじゃないかと思うくらいの一言にビビル。

パーン

「15!」

パーン

 

やっと終わったと思って、膝から降りようとしたら、腰を上から押さえつけられる。

「あと5発は僕に楯突いた分。」

ほっとしたのに、まだ、あと5つも追加だなんて。

 

そういって、右、左、真中、右、左 とパーン、パーンと小気味いい音のおまけがついた。

 

「ごめんなさい。」痛いお尻をさすりながら、ごめんなさいを言う。

 

占い師よ。あなたは本当に正しかった。

こっそり涼先生の横顔みながら、天を思わず仰いでしまった。

 

 

「よし、授業をはじめるぞ。」

何事も無かったように開始のサイン。 

 

「まったく。」

先生の呟きは聞かなかった事にして。

 

私の未来の彼氏様が出現間近というのも信じてます!

 

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