「うわ。まーくん。」
別に逃げる事なんて何もしてないのに、ふと偶然本屋でばったり。
「お。参考書選びかな?」
にっこり微笑みながらの毒矢が胸に刺さる。
な、わけないじゃん。どうみてもここ雑誌コーナーだし。
引き続き、 顔は笑顔で。
「今、まーくんって言ったように聞こえたけど。」
と首を傾げる。
やっぱり、聞こえてたか。地獄耳め。
「あー。っと気のせい。とか?」
・ ・・
「ウソです。ごめんなさい。」
他の人が見たら、和やかな笑顔だろうけど、思わずその目が怖くって、肩をすくめる。
「そうかそうか、まだまだ僕は甘く見られていたのかな。」
「やだ。そういうのと違うのに。」
「違わない。」
そんなきっぱりいわなくったって。カッコイイ先生だけど、
ちょっと怖いからやわらかくするためにそう呼んでいただけなんだけど。
マジで、その茶髪もサラサラヘアーも。本当に似合ってるし。
今日は突然の出現にびっくりしておもわず、言ってはいけない「まーくん」のフレーズが出てしまった。
「敬語の使い方を教えてあげるよ。買い物すませてくるからちょっと待ってて。」
「沙耶も買うものある?」
「いえ。無いです。」
まじ落ち込む。
なんで先生が来る日じゃないのに、会っちゃったんだろう。
「そうそう。ちゃんと『です』をつけるんだよ。」
笑いながらレジに向かって言っちゃったよ。
時々見せる、あのガキ大将みたいな顔の時は本当は怒っていないのかな?
そこがまだまだつかめない。
このままそっとフェードアウト・・・。とか考えて自動ドアをじっと見てたら、
「スタバに行くか。」の声で“現実”がまさに隣に戻ってきた。
「えー。そんな人が一杯入っているところでお説教は嫌だよ。」
ふー。
「褒めてもちっとも続かないんだな。敬語つかいないさい。」
「じゃ、そこの公園に行くか?」
ってそんな、ひどい。
「スタバがいいです。」
そうして行ったスタバで散々お説教。
周りの人の目が気になって気になって、恥かしいやらなんらやでもう顔、上げられない。
やっぱり、公園にしておけば良かったかな?
トントンと指で机を叩く音。
「そうかそうか、ちっとも聞いてないんだな。口で言っても分からないみたいだから、今度の授業のときに、もう一度最初っからゆっくりと教えるか。」
そういってアイスコーヒー全部飲んで
「口で言ってもわからないなら、これで解放してあげる。」って席を立つ。
「てか、ちょっと時間切れ。ごめんな。次の授業の時にきっちりとするから。」
え?
「いくつにするか考えておきなさい。」
「え?」
何のことか分からなかった。
「次会うときにする回数、良く考えておきなさい。」
それだけ言って、用があるからって、勝手に帰っちゃった。
えー!えー!えー!!!
目の前には、全然減っていないアイスカフェラテ。むしろ氷が解けて量が増えてるかも。
少なく言ったら反省が足りないって怒られそうだし、かといって、多く言ったら
きっとその分きっちりたたかれるんだろうし。
思い出したように、薄まったラテを一気にゴクゴクと。
実は喉が渇いていたみたい。
あまりに衝撃で帰りがけ店の階段から転げ落ちそうになったの、先生知ってるのかな。
お説教ちゃんと聞いて置けばよかった。まさに後の祭り。
蛇に睨まれた蛙のようなひと時だった。
次回・・・。あーあー。自分で蒔いた種だけど・・・。
それまで、生殺し・・・
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