「こんにちは。」
先生の前の診察椅子に座る。
「お。調子はどうかな?」
ニコニコ微笑む先生。やっぱり、おっそろしく綺麗な顔してるよね。
指を診察してもらう
「うん。いいみだいだな。ちょっと曲げてみようか。」
そーっと力を入れると、半分くらいはつき指をした指も曲げる事が出来る。
「指も綺麗に真っ直ぐなままだし。大丈夫だね。」
「若いし。あとは自分で湿布とかしばらく貼ってればいいでしょう。」
治るのはそりゃ、うれしいけど、でも先生の顔見に来る理由が無くなってしまうのは、ちょっと、いや、かなり残念。
もう一度ニッコリ微笑む先生の顔をみたら、なんだかつられて嬉しくなる感じ。
あ〜この人の笑顔って本当に好きだな。
「もう、そんなに痛みもないよね?」
「おかげさまで。」
「そう。よかった。女の子だし、綺麗な指だから。大事にしないとね。」
「はい。」
なんだか照れる。
「そうそう。ちゃんとタバコはやめてるかな?」
「え?」と私
「え?」と先生
わざと繰り返さなくっても・・・。
「ちゃんとやめてますよ。」
ぷうと怒った顔をして嘘をつく。
「さ、じゃあ指のほうの、診察はいいでしょう。」
なにやらカルテに記載しながらブツブツ言ってる。
「さて、どうするかな。お仕置きしたら、次来なくなっちゃうかな。ま、もう治ってるからな。」
独り言にしては、単に手順確認のように思える文の中に、はっきりと
“お仕置き”というのが聞こえたんですけど・・・。気のせいであってほしい。こんなにリラックスしてちょっと夢見心地だっていう状態なのに。悪い事してないし。
「さ、来なさい。」
「え?この態勢って・・・。やだ。やだ。」
「やだじゃないでしょ。タバコは駄目だって言ったのに。」
「吸ってないもん。」
「あのね。目が完全に泳いでて、良くそんな事いえるね。うそつきはお仕置き倍だな。」
「やだー。先生この態勢、第一つらすぎる。」
「子供叱る時は膝の上が決まり。この間の忠告守らなかったからたっぷり恥かしい思いしていきなさい。」
そういって、本当に恥かしい思いをさせられた。
ありえない自分の置かれている環境をどんなに呪っても、膝の上から開放される事は無かった。もう吸わないから。吸わない。約束する。と何度も言ったのに、
「禁煙しようと思わないとね。」
と言って、全然取り合ってくれない。だからやめるって言ってるのに・・・。
「指に血が上っちゃうよ〜。」
そういってみても駄目だった。
オニー。放して。もうやだー。
「この後に及んで悪あがきするなら、もっと痛い目にあうよ。」
平然とした口調で恐ろしい事を平気で言う辺り、さすがって感じ。
何度も頭の中で、先生なんて嫌いだと思ったのに、悔しいから懸命に堪えてたはずの涙が出る頃には、もうなんでもよくなっていた。
「ひっくひっく。」
「あああ、女子高生泣かすつもりは無かったんだが。君がいけないんだぞ。」
なんだか、ちょっと謎のフォロー?みたいなのを入れられ、ようやく。本当にようやくと膝の上から解放された。
ああ、前回の診察で何か予兆みたいな事があったのだから、もっと注意深くしておくべきだった。
しかし、先生、人の後ろめたさとかそういう心の動揺については、異常に鼻が利くのに驚く。それが嬉しくってちょっとジーンとなった事も過去の診察では確かにあったけど、今日のはマジで余計な能力って感じでした。
気のせいか、待合室で会計済ませるまでのひと時、皆が私を見ている気がした・・・。気のせいだと、思うのだけど。。。
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