実は先生に会うのって密かに楽しみ。二度目の診察だから、不安も無いし。

 

「調子はどうかな?」

 

看護婦さんが私の左手の包帯を解いて、現れた青紫色になったままの左手中指をそっと触る。酷い突き指の為、薬指を支えにした方がいいからと2本一緒に巻くように言われて、ぐるぐる巻きにしてあったので、その開放感が嬉しい。

 

ちゃんとしておかないと指が曲がってしまうらしい。とにかく左手とはいえ不自由さがもどかしい日々。

 

 

「ん?」

 

ピクっと今、青筋が立った気がする・・・。へ?

 

「指使った?」

 

な、何のことでしょう???

 

吸い込まれるような目をしてじっとみないでほしい。

緊張度が増すじゃないですか。

「大丈夫かな?」って心配そうに、聞かれるだけで信頼しちゃうっていうのに。

病気じゃなくっても会いに来たい位なのに。

 

まさか怒ってないよね?先生?

 

「ユビをツカイマシタカ?」

 

ゆっくり言わなくっても日本語なんだから分かるし〜。

 

「ちょっとした事とか、どうしても使っちゃう事もあるかな・・・。」

 

本当はネットを少々・・・。

 

「はっきりいうけどね。」

 

「はい?」

 

「この間より酷くなってる。」

身に覚え・・・。

多分。いや絶対にキーボードをカタカタと打った、それが原因と思われる。

 

またそうやってじっと見る〜。顔が良すぎて見入ってしまうじゃない。

 

「・・・」

 

「治したいと思ってる?」

 

「そりゃあ。不便だし・・・。」

 

でも、先生に会いたいから、“半分”くらいかな。すぐに治っちゃったら会えなくなっちゃう。

 

「そう。じゃあ、先生が言う事ちゃんと聞く事。いいね?」

 

「ちょっと痛いよ。」

 

どんな治療なのだと身構えたら・・・。

 

「立って。」

 

「はい。お仕置き。」

 

そういって お尻を叩かれた。

 

呆然・・・。

 

「次は容赦しないからね。」

 

     ・・

 

あまりに衝撃で言葉が出ない。

 

「あ、あの。」

 

「湿布出しておくから。2,3日後にもう一度来てください。それと、ユビは使わないように。看護婦さんに包帯巻いてもらうから隣の部屋へどうぞ。」

 

そういってカルテに書き込み始める。

 

「ありがとうございました。」

 

 

 

って何に対してなのか良く分からないような診察にお礼を言って立ち去ろうとしたら呼び止められた。

 

「あ、そうそう、笠原さん。」

 

「はい。」

まだ何か・・・?

 

「イライラする時は牛乳とか、カルシウム取りなさい。高校生なんだらタバコは駄目だぞ。」

 

ひきつりながら

 

「あ、はい。」

 

と半ば肯定。

 

「どうしてって 顔だな。」「右の指に残り香がね。」

ニヤッと笑いながらそれだけいうと、

 

「じゃ、お大事に。」と言ってカルテ書きに戻る先生。

 

嘘・・・

 

「あ、ありがとうございました。」

 

なんだか精神的に攻撃されたような錯覚を覚えた診察だった。あなどれない。恐るべし緒方先生。

 

 

 

 

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