「あれ?どうした?」
気さくに私の顔見て、すぐに声をかけてくれる。
ああ、そこまではいつも通りの優しい先生だった。

つい、2日前、部活で捻挫して、あまりに腫れたからお母さんが心配して、病院行けっていうから。しぶしぶいった近所の緒方医院。先生がめちゃめちゃカッコイイし、優しい。
数日は烈しい運動しなければ捻挫だから大丈夫って、湿布もらって帰ってきたというのに。昨日、練習試合に出たくって、足もそんなに痛くなかったからと部活に出たのがまずかった。
バスケットボールの感触を確かめるように、そして、段々烈しくなるマンツーマンの攻防につい・・・。自然と足をかばっていたのだと思う。でもって、足のせいか、思っていたように体が動かなくって転倒。今までに無い痛みに早退して、再び、病院直行。

「えーっと、ちょっと部活で。」
「部活?」
ちょっと眉をひそめるしぐさ。「先生」って感じの威厳。
「おととい来たとき、何ていわれたのか忘れちゃったのかな?」
「忘れてたわけじゃないけど、もう大丈夫かなって。」
「で、余計酷くしたわけだ。」
そういって診察ベットに座るように言われる。
「ここ痛い?」
「イタ!」
「ここは?」
「痛い!です。」
「ここは?」
って全部痛いんだけど・・・。痛くって、足を引っ込めようとするのに、左手でがっちり押さえられてて、再び、「ここは?」と言う声とともに痛みが襲う。

「うーん。」
「レントゲン取っておこうか。」
そういわれてレントゲンを取って、現像できるまで少し待合室で待つ事に。診察で思ったよりブルーになる。だって、痛かった。軽く触ってるだけって先生はいうけれど、激痛。

ふただび呼ばれて診察室に戻った時に、ちょっと緊張していた。酷かったらどうしようって。
「骨に異常はないから、今度こそちゃんと安静にして、良く湿布で冷やすんだよ。」
その診察結果を聞いて安心した。

「来週、練習試合があるんだけど、治るかな。」

「ま、無茶しなければ、治るかもしれないけど、練習は無理だからね。」

「えー。」

「えーじゃない。」
ビシリといわれて、しぶしぶ
「はい。」とお返事。

「心配だな。また悪さしようとしてるんじゃないか?」

「言いつけ守れない子はお仕置きだな。」

「次の約束破らないためにも、今日はこの間の言いつけ守らなかった分のお仕置するか。」

「え?」

「なに?お仕置きって。。」

冗談かと思っていた。軽い気持ちでふざけて言っているのかと思っていた。
それが、あんな、泣くような事になるなんて。




待合室でお会計するまで待っている間も痛かった。足はもとより、お尻が。
顔を上げるのも恥かしくって、ずっとうつむいて、名前呼ばれるのを待っていた。

待っている間、あの酷く恥かしかった時間が、嫌だというのに、ひとりでに頭の中で繰り返される。先生の膝の上に乗せられて、叩かれるたびにその痛みと恥かしさの恐怖がいつまで続くのかと怯え、足の診察の時のように、もう、これで終わりにして欲しいと何度も何度も心の中で呟く自分の姿が。


痛かった。そして、かっこいいよ。やさしいよ。と大好きだった先生が、実はとっても厳しい面を持っている事を始めて知った。言いつけを守れない子には守れるように躾ける。そう言い放つその姿は毅然としていた。

 厳しかったけれど、でも、やっぱり、本当の所は尊敬。
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