「柴崎君、お昼終わったらちょっと。」
「はい。」

まずい。先生のちょっとは非常にまずい。頭の中をものすごい勢いで“やらかした事”が無いかどうか記憶の限り探し出そうとする。

 昼休みの後に呼び出されるときは大概とんでもなくヤバイ状況なのは過去の経験からも明らかだけど、ちゃんと今日は遅刻しなかったし(て、これは以前、すでにこっぴどく叱られた事実)やっぱり思いつかない。

「何か言う事あるかな?」
患者さんに見せるときと同じ、優しい口調、優しい顔。うーん。いつもどおりのハンサム顔。・・・。と見とれている場合ではなかった。

「すみません。何も思いつかなくって。」
「そうか。」
「ここは病院なんでね。携帯は電源切って置くように言ってあるはずだけど。」
あ。思い出した。今朝、電源切るの忘れてて、しかも音が鳴るようになっていて・・・。患者の誰かがちくったんだ。先生に。

「つい。」
「つい?」
ついは禁句だった。
「すみませんでした。」
「そう。言い訳は無し。この間も鳴って、今度やったらお仕置きだと言っておいたね。」
「はい。」
「診察ベットに手をついて。」
「はい。」
ナース服の上からとはいえ、かなり恥かしいポーズ。
「患者さんの健康にかかわる事は特にしっかりやってもらわないと困るよ。」
「はい。」
しゅんとなる。
「反省しているようだから、軽めにしとくか。」
そういってパチーンと叩かれた一発目のどこが軽いのでしょう?う。うそ。これで軽め?

「いったっ」
「まっさか、こんなに甘くしてるのに。」
パチーン パチーンとテンポ良くお尻が叩かれるけど、
先生の平然とした口調って、オニだ。いじめっ子だ。
お仕置きするときはいつも本気の先生が甘くしてくれるなんてぬか喜びだった。

「今度から気をつけます。」

「この間も聞いたからね。もうちょっと我慢しなさい。」

パチーン パチーン

「午後の受付に影響が・・・。」

「立ってやればよろしい。」

そんなにべも無く。

パチーン 

「イタイ!」

「次やったら本当にこんなもんじゃないからね。」

バチーンと最後に一発お見舞いされた。

「すみませんでした。」「以後気をつけます。」
すごすごと退散。

「はー。あいたたた。」

お尻を擦りながら照れ隠し半分、オーバーに席に着く。

「大丈夫だった?もう一人の受付兼看護婦の可南子がそっと心配してくれて囁く。」

「先生、連日だねー。」
「え?」
「昨日は患者さんだったけど。」

「そうなの?」

「受付あけて〜」奥から地獄耳の先生の声が聞こえた。まさか、今の会話聞こえてないといいけど。人の噂話なんてしたのが分かったら、またお仕置き間違いない。

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