緒方医院1(リハビリ通院)
イタイ
「少し痛いけど、我慢ね。」
そういいながら、的確に激痛ポイントを刺激。
「いたい〜」
ボソッと我慢しつつもかすれたようなうめき声をだして、この一時の痛みを堪える。

「よしよし、良く我慢したな。」
 そういってはまた違う新たなツボに狙いを定めて次の集中攻撃が始まる。

「よし。良く我慢した。」

 褒められてリハビリのマッサージが終わると途端に優しい笑顔に戻る。
 緒方先生だから頑張ってなんとか、我慢できるんだよ。

 本当は全部痛いんだけど、先生が『ちょっと痛いけど我慢して』とわざわざ言うときは要注意。何しろ激痛だから。神経に刺すような痛みが走る。でもマッサージの後は体がほぐれ、すごく楽になる。自分の体のことを自分よりわかっていると思うとやっぱりセンセーすごいなって尊敬。

 リハビリの無い日は言われたとおり自分でストレッチするのが日課となっている。やらないと筋肉が硬くなるらしくって一発でサボっていた事を指摘され、そのうえ、マッサージも当然いつもより痛くなる。

「ちゃんとやろうね。」
 やさしくお兄さんみたいに笑顔でニッコリされると「はい」って素直に言える。
「ごめんなさい。」も素直に口からでる。

でも大好きな緒方先生とも回復すればお別れ。

「よし、良く頑張ったね。もう今日で通院は終わり。おめでとうございます。」
 ついにその日がやってきた。椅子に座っても背が高いのが分かる程、目線の高さが違う。足、長いからなー。
「また、病気になりたいよ。」
「こらこら。」
「だってそしたら先生と会えるし。」
「そういう問題じゃないだろう?」
看護婦さんが空気を察して
「じゃあ、桜井さん、これでお着替えを。」
と婉曲にサインを出してくれたのに、気がつかなかった。というよりそれで気がつけというほうが無理でしょう。
「もうちょっと。」
てなにがもうちょっとなのか。
「これ以上わがまま言うと痛い思いをするよ。さ、健康になった子は帰りなさい。」
きっぱり言われて、『子』扱いにちょっとカチンとなる。
「えー。」
もう歯止めが利かない。

優しいお兄さんにわがまま言って甘えたかったのかもしれない。

「体治しに来て、また自分で体壊しても良いなんて。」

そういって私の手を引いて立たせた後、お尻に一発バシンとお見舞いされた。
「やだ!」

そういったのに、
「ごめんなさいは?」
て怒った顔でじっと見つめられた。
いつもは素直にごめんなさいだっていえるのに、意地を張っていえない。

「やれやれ。先生怒らすと泣く事になるんだぞ。」
何故か今度は膝の上に。

「足治ったばかりだから、特別に10発で許してあげよう。」
穿いていたトレパン(マッサージ用に動きやすい格好にお着替え)をさっさとおろし、事もあろうかパンツまで・・・。
「ヤダー。ヤダヤダヤダ。」
「ヤダじゃない。」
パチンと叩かれ、ビビる。

「往生際が悪い。態度が悪いと、10発じゃあ済まないよ。」
そういって脅されて始まった。
 
 本当にあれは脅しの一言だと思いたいが、もしかしたら、本気だったかも。確かめる勇気も無く、パチン パチンと痛みがお尻に降りかかっている間、我慢する。
 いつもの我慢とは訳が違う。こんなに恥かしくって、こんな痛みを耐えろというほうが無理。
 やっぱりシクシク終わる頃には宣告どおりに泣いていた。

「はい。着替えて終わり。」

 こともなげに、パンツとトレパンをあげてくれて、そのままカルテに向かってしまった。

 ここで『ありがとうございました』というのも変だと思いながら、着替えに向かうと後ろから、「お大事に。」という声。つられていつものように
「ありがとうございました。」と答えていた。

「体大事にしない子は先生厳しいからね。」

ドアを閉める前にもう一言追いかけてきた。


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