バサー

 

文化祭の間、バサーがPTAのボランティアと共に体育館で行われる。

事務局員は当然そっちに駆り出され、裏方作業が結構ある。先生も、入れ替わり立ち代わり

当番体制。PTAの人もローテーション、でも事務局は苦手な佐藤さんと2人。おじさん達が

手伝う訳がないし。適当に息抜きしなきゃ、もたないよ。

 

「ちょっと事務局にいますので。」

そういって休憩。

 

もどってきたら、なんと、修ちゃんの姿が!やだ。当番時間そういえば、今日の2時からだった。

「お疲れ様です。」

いそいそと側に行ってマーク。

 

 

「須藤さん、ちょうどよかった、後でちょっと職員室で話があるから。」

あれ?なんだろう?

「はい。わかりました。」

 

なーんだろう。なんだろう?秘密っぽいな。後でだって。

 

 

「じゃあ、佐藤さん、ちょっと須藤さん借りますので。」

そういって、ちょっと切れ間に連れ去られた。なに?修ちゃん。なにがあるのかなー?

 

ガラガラっと音を立てて、職員室のドアを開けると、ガランとしていた。

各先生、出払っているから。ちょっと寂しい感じの空間。

 

「時間もらって、きてもらったのは、事務局の佐藤さんからさっき、 須藤さんがしょっちゅう抜けてしかも全然戻って来ないから、、忙しくて目が回りそうだといわれてね。」

 

あの、ババア。オーバーなんだよ。しかも、なんで修ちゃんに媚うったりするのさ。超ムカツク。

 

 

「杉本先生、そんなことないです。数回、席外しはしましたが。」

周りの目があるので、敬語。

周りの目があるので、修ちゃんもおだやか口調。

 

「そう?それなら、いいけれど、ちょっと心配になってね。どちらの言い分がどうと言うことは僕は現場も見ていないし、なんとも言えないことだけれど、もともと僕のクラスの生徒だったから、ちょっと気になってね。」

 

そういって八重歯を見せた。

 

あー。あぶなかった。修ちゃん、今日は人目があるせいか、あっさり開放してくれそうな予感。けっこう私も度胸が座ってきたかな。

 

「じゃあ、あまり長く引き止めると、佐藤さんに悪いから。すまなかったね。呼び出したりして。」

「いいえ、いいんです。」

 

修ちゃん、笑顔超ステキよ。他の先生が居なかったら、キスしたいくらい。

 

修ちゃんをうまくまいたのと、修ちゃんの笑顔にメロメロだったのと、修ちゃんが一応自分のこと公平な判断してくれたのとで、スキップしたい気分。ほっと安心した。ババアにはむかついたけど、おかげで体育館の往復の距離、おおっぴらに2人で歩いちゃったし。

 

「なんか、後ろめたいと思うことあるでしょ?」

 

一週間の中で一番大好きな土曜日、修ちゃんとのデートの帰り道、不意に言われた。

全然身に覚えが無くって、何の事って感じ。

 

「なんで?後ろめたいことなんてなんにもないよ。」

「尚美、自分がポーカーフェースできないって自覚がないんだよな。」

「だから、何の事?」

 

「この間のバザーの係りの件。」

「それがどうしたの?」

 

 

「やれやれ、ここまで言っても白を切るなら、ちゃんと話をしないとな。お小言くらいで許してあげよう架とおもったけど。ちょっと家に寄って。」

 

よって。って誘っているけれど、実は完全に命令形だよね。ここで失礼したいなー。

 

話はなごやかに始まった。

修ちゃんの椅子の前にはブラックコーヒー。私の目の前にはカフェオレ。でも、コーヒーのいい匂いはするけれど、私は口をつけらえない。とてもそんな気分になれないよ。

 

 

「自分だけさぼるなんて。しかも僕の忠告に対して、そんな事していないって言って、ごまかそうとしたね。」

ってどうして、わかっちゃったんだろう?あの場では納得してくれたと思ったのに。

 

「ほんのちょっと休憩しただけだし、翌日は、ちゃんとサボらなかったよ。」

「ちょっとってどれくらい?」

「・・・。」

意地悪。

「尚美、人から質問されたときはどうするんだっけ?答えなさい。」

1時間くらいかな。」

「抜けた時間全部で一時間?」

「もうちょっとかも。」

「僕にもっと追求させる気?」

「ごめん。」

 

「そうだね。尚美はこの件に関しては、ちっとも悪いという認識が無かったみたいだね。」

「言われてみたらそうだった。」

「正直でよろしい。」

「それで?」

「なに?」

「お仕置きして下さい。はい、言って。」

「なに?そんなの言える訳無いよ。」

「言えるよ。悪いと思っているんだろ?」

「思っているけど。」

 

うわ。にらまれた。

 

「お仕置きして下さい。」

 

「お仕置きはどんなお仕置き?」

「それって・・・。」

 

「そんなの。わかってるじゃん。」

 

「いいなさい。」

「やだ。そんなの。言わない。そんなの言える訳無いよ。」

「尚美はいくつ?こんな、言わなくても常識でわかるようなことしておいて、反省もできないような子には、お仕置きが恥ずかしいなんて言う感情もないだろう?」

「そんなこと・・・。ない・・・。」

 

「お仕置きは嫌?」

「嫌だよ。嫌だ。修ちゃん怖いんだもん。」

「怖くならざるを得ないことをするのは誰?」

 

「私です・・・。」

 

「僕は怖い?」

「お仕置きのときはとびっきり。」

 

「そう。お仕置きのときは甘い顔はしないよ。それはわかっていたようでよかったよかった。」

よくないー!

 

「もうしないから、お仕置き今日は無しにして。」

 

「駄目。」

 

「お願い。」

 

「一度駄目って言ったこと、もう一度お願いするの?しないよね?」

 

「し、しません。」

 

「さ、なんて言うんだ?もう一度。」

 

え?といって修ちゃんを見る。まさか、『お仕置きし下さいって』いえって言ってないよね?

 

「ごめんなさい。」

 

「それはわかった。」

 

って言うことは、もう一つの方か。やっぱり。

 

「・・・・・」

 

「聞こえないな。」

だって、何もいってないもん。わかっているくせに。オニッコ。ああ、どうしてこんなことになっちゃうんだろう?

もう、やけ。いいよ。どうにでもなれって感じ。

 

「お仕置きして下さい。」

 

「よしよし。よく言えた。自分から言ったんだから、お行儀よく受けるんだぞ。」

悪の連鎖にはまってる。修ちゃんの後ろに尖ったしっぽがついている。絶対に。

 

「膝の上にきなさい。」

「はい。」

 

パーン パーン

多分、サボった事くらいじゃあ、こんな事にならなかったと思う。パーン パーン

その後、チャンスがあったのに、正直に言わなかったから。正直に反省しなかったから。

パーン パーン パーン パーン

わかる。パーン わかるんだけど。パーン

 

「修ちゃんもう、堪忍して。」

手でお尻を隠す。

 

「今すぐその手をどけなさい。」

 

「聞こえているのに、言うことが聞けないんだね。じゃあ、お仕置きは追加。」

「あーまってまって。ごめんなさい。もうしないから。」

 

「『もうしない。』 ね。まあ、いいだろう。二度目は無いよ。」

 

「はい。」

 

ぐずぐず、鼻を鳴らす。痛いよううう。

 

「ちゃんと反省してる?」

 

「してるしてる。本当にしてる。」

「皆がやっているときにチームワークを乱すことはしちゃいけないぞ。」

「はい。」

「それから、僕に嘘つくのも禁止。」

「はい。」

それは重々承知してます。

「よし。」

パーン パーン パーン パーン 「よし」っていうから終わりかと思ったのに。

パーン パーン パーン パーン

痛い。痛い。でも手で隠したら駄目だし。でも、もう、手がでちゃいそう。

 

「よし、最後」

バチーン

 

「い。いったーーーい。」

 

最後の一発は飛びっきり痛かった。飛びっきり痛くって、ずーっとジンジンしてる。

 

「だいぶ我慢したみたいだからね。特別に切り上げてあげた。」

 

嘘だ。充分たっぷりと痛い、痛いお仕置きだったもん。

 

「なんていうんだ?」

「ごめんなさい。もうしません。」

 

「よし。」

 

涙に濡れた顔で コーナーに立ちなさいといわれた。この間、コーナーに立ちなさいといわれたから、どうするのかはわかっていたけれど、本当はすぐに修ちゃんによしよしと慰めてもらいたい。でもここで変にわがまま言ったが為に、またお仕置きされかねないから、大人しく従う。

 

 

一人で壁に向かっているのって嫌い。

「ちゃんと、頼むよな。」

「うん。」

修ちゃん、最近厳しいね。

「次からはちゃんと自分でお仕置きのお願いをしなさい。」

 

「そんなの、無理だよ。」

 

「もう一度膝の上に乗って、反省するか?」

「うそです。ちょっと言ってみただけだもん。」

 

ああ、なんだか、最近しっかりと教育されている感じ。学生のときより酷い。

 

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