気の緩み

 

「この雑なノートは一体なんだ?」

やっぱりわかっちゃったのかな?

「有紗、質問に答えなさい。」

「え?」

つい、すっとぼけようなんて、絶対無理なのに、弱い心がそんな声を出させた。

「聞こえなかった訳がないね。」じりじりと責められる。

「答えを写したような乱雑な宿題なんて、やってこないのと一緒だ。」

「言われた事をしないで何してた?」

 

昨日、ついつい、スペシャル特番を見てたなんていったら、どうなるか。口が裂けても本当の事なんていえないよ。

「たるんできているようだね。」

「仁先生。そんな事は決して。」

「僕の目をごまかすなんて百年早いし、やる気が無いのなら、やらずにはいられない気持ちにさせるしかないね。」

 

「有紗?分かっているんだろ?」

「顔を上げなさい。」

だって、あげたら、目が潤んでるのわかっちゃうじゃん。その上、先生の怖いハンサム顔みたら、ポロって零れ落ちそうだよ。

「聞こえなかったのか?」

ちらって、顔を上げてまた戻す。

「顔を上げなさい。」

仕方なく、顔をあげたけど、やっぱり、予想通り、右目から、つーって涙がこぼれちゃった。やだ。恥かしいよ。まだお仕置きを受けてもいないのに。

「僕が言われた事を守らないとお仕置きをするのは知っているね?」

「はい。」やばい、声が震えてる?

「正直に言わないと酷い事になるのも知っているね。」

「はい。」

「これだけ言っても何もいわなかった強情張りにはたっぷりとお灸をすえる必要があるか。」

 

お仕置き前なのに、泣いちゃうなんて。

「膝の上に来なさい。」

従うしかなかった。涙でぬれて、視界がぼんやりするのに、先生の顔が怖いのだけははっきりと分かる。

「ごめんなさいも言えないような子には、ちゃんと正直に話そうという気になるまでしっかり躾ける必要があるな。」

いつものように下着がおろされる。恥かしさの極み。その上、恐怖心がピークに。もう、怖くって、体が萎縮する。ただ、黙っているしかない。

パシン!最初の一打にビクッとなると、続けざまに、パシン!パシン!と音と共に、しっかりとした痛みがお尻に突き刺さる。

泣いてしまっている自分が恥かしかったのに、もうそれすら考えられない。

痛い!痛い!

一打一打、痛みが突き刺さる度に考えられるのはそれだけ。

「ズルをしてごまかそうとした分。」

パシン パシン パシン パシン それが永遠に続くのかと思って必死に心の中で『我慢、我慢』と唱えていたら、

「正直に言わなかった分。」

と新たな理由が

パシン パシン と続くなか、いつもう耐えられないと言い出そうか悶々と考えながらも我慢していたが、かなり、限界に近く思えてきた。

「もう。」

「もうなんだ?ごめんなさいが言えないうちは終わらないぞ。」

そうだ、ごめんなさいって言ってなかったんだ。

「ごめんなさい。」

即されて初めて言うなんて。

「どうして、宿題ちゃんとやらなかった?」

「ごめんなさーい。」

一度言うとこのフレーズしか出ないのに、先生は答えを言うまで許してくれない。

パチーン パチーン と大きな音が耳元まで届く。

「『ごめんなさい』じゃ質問の回答にならないし、それじゃあ、いつまでも終わらないぞ。」

そういって、パチーン パチーン と痛いっていうのに、お尻は叩かれ続ける。

「テレビ、テレビをついみちゃったの。」

パチーン パチーン

「優先順位ってものがあるだろう?」

「やるべきことしてから、好きなことをしなさい。」

パシーン 

「ひぃ」 声をもらすほどの一打。

「返事は?」

パシーン だから痛いっつーのに。

「はい。」

力なく答えて、もう許してもらえるかと思ったのに、さすが仁先生。鬼たるものこうなのか、と思わせる一言が。

「今までのは、悪さを告白しなかった分。」

「態度が悪かった分、怠けた分、雑なごまかしをした分、あと30発な。」

そんな殺生なという言葉がでかかったけれど、これ以上怒らせてはいけないと思い、ぐっとこぶしを作って次の一打にそなえる。

 

でもそんな備えでは不十分だった。

パシーンと入ったその一打はビリビリとして、涙がジワっとあふれるような一打。これがあと29発なんてとても無理。そう思っている間にも、一打、また一打と振り下ろされる。

発狂しそうな痛みから逃げ出したくもがくけど、どうにもならない。

「嫌。嫌。いやー。」

散々泣いても駄目。酷い、もう許して、許してください。

しくしく泣きながら訴えるのに、体がのけぞるほどの痛み。

「オーバーだな。」

そういいながらも平然と続ける。

「痛いよー。」

どんなに訴えても、30発宣言したとおりの分が終わるまで膝から下ろされることは無かった。もちろん、数えられなかったから、本当はいくつ叩かれたのか分からないけれど、ジンジンとするお尻だけは自分の感覚ではっきりとしていた。

 

「すぐ、手を抜く。怠け者は容赦なくお仕置きだからな。」

「はい。」といったものの、あーーやっぱり、この人は好きになってはいけないのかもと思う一日であった。

 

なにからなにまで、なんですぐわかっちゃうのさ?

「ごめんなさい。」

と謝ったときに覗き込まれて目をみられた。その顔があまりに格好よくって、ついまたそれでもふらふら。ときた。 さっきは嫌だと思ったけれど、でもやっぱり好きなのかも。

 

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