嘘?本当?

 

「先生来る時桜が超奇麗だったよ。ちょっとだけ今から見に行きたい。」

「行きたいって、今から授業だろ?」

「だって、散っちゃうよー。」

「来るとき見てきたんだろ?さ、勉強始めるよ。」

「ケチ。」

「ケチ?ケチじゃない。有紗に勉強を教えるのが、僕の仕事だからね。ま、監督も入ってるけど。」

「意地悪。」

「有紗、いい加減にしなさい。」

 

「はい。」しぶしぶ返事をすることになる。

いいじゃん、ちょっとくらい、仁先生と桜並木歩きたかったのに。

 

1時間後、

「先生、ちょっとたまには息抜きとかしてみたりしようよ。桜綺麗だよ。」

「駄目。そんなに集中力が散漫なら、膝の上に来るか?」

「ちょっと言っただけなのに。」

「有紗、いいかげんにしなさい。」

「あ、嘘、嘘です。ほら、今日はエイプリルフールだし。」

「そういうのは エイプリルフールとは言わない。」

「来なさい。」

「ごめんなさい。ちゃんとするからー。」

「駄目。」

「仁先生、これくらいのことじゃ、お仕置きしないよね?」

「ちゃんと勉強するし、もうわがまま言わないから。」

「今まで お仕置きを宣告して、お仕置きしなかったことあるか?」

「無いけど・・・、これくらいで、厳し過ぎると思うし・・・。」

 

「来なさいと言ったはずだよ。」

「返事は?」

 

「はい。」

仕方なくそおおっと立ち上がると、

 

「つまらない 嘘だ。今日はエイプリルフールらしいからね、お仕置きはしないよ。」

?!

「ひどい。そんなの『嘘』じゃないよ。本当に怖かったのに!」

「有紗の嘘にレベル合わせた。」

 

     ・・って。 まあ、お仕置きが無くなったから、結果は良かったけど。

「いつまで ふくれっ面してるんだ。さっさと勉強する。」

「はーい。」

「返事は短く。」

「はい。」

 

ちぇ、折角の桜並木なのに、しかも、脅かしておくだけ、脅してなんて、酷いよ。鬼だと思っていたけれど、鬼じゃないね、悪魔だよ。悪魔。私がどんなにびびったと思ってるのさ。絶対今日のは楽しんでる。ポーカーフェースなのが憎らしい。

 

 

それなのに、それなのに、勉強が終わったら

「駅まで一緒に行くか?」

って聞いてくれた。

「いく。」

と即答して、仁先生が桜並木の薄明かりの中、初めて駅まで送ってくれた。

「ちょっと寒い。」

と言って ピトッと寄り添ってみたら、

「マセガキ」

といって、頭をくしゃっとなでられて、ぐいっと戻された。作戦失敗。

ガキじゃないのに。

 

 

 

 

「・・・・・好きな人とサクラ並木を歩くと結ばれる・・・・・」

だから、どうしても、歩きたかった。

 

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