夜のファミレス

だいたいなんでお習字なのよ。何から何まで気に入らない。ファミレスでタバコをふかしながらこの間の出来事を反芻していた。深夜のファミレスは変わった客層でいつものように、客層に統一性なんて無いから、人間観察に飽きる事無い。

 

突然灰皿の上から水がジャとかけらた。『何?』と思ったら聞き覚えのある声が

「未成年の喫煙はいけないね。」

その声はまぎれもなく聞き覚えのあるあの人の声にそっくり。灰皿にかけられた水が自分の背中にかけられたように寒いものが走る。

 

振り向く必要は無かったなぜなら、先生は目の前のソファー席に勝手に座ったから。

「こんなところでコーヒー一杯で粘ってる暇があるなら、家に帰って勉強したら?」

「そ、そうですよね。じゃあ、これで失礼します。」

後先の事を考えるより、とにかくこの場から立ち去りたい一心。

「一緒に帰ろう。送っていくよ。」

「あ、自転車で来てるし、大丈夫。いつもの事だから。」

「いつも?」

「え?あ、そういう意味じゃなくって。」

買ったばかりのタバコの箱は即座に取り上げられた。まだ一本しか吸ってないのに。

「していいことといけない事はわかるよね?」

「はい。」

「タバコは禁止。いいね?」

「はい。」

いついわれるの?もうさっさと宣言すればいいじゃない。

「有紗?」

うながされてる?よね。やっぱり。

「自分で悪いとは思っていないようだな。」

「してる。もう吸わない。ごめんなさい。」

 

 貴重なタバコはあの後、出口のごみ箱へ直行だった。

 

 そして、私は先生からお仕置きを宣告された。

 

 

 

 

ついにそのときがやってきた

(翌日)

「今日は授業している時間は無いかもな。」

それってどういう意味?まさか、ずっと昨日のタバコの件でお仕置きに当てられるって事?確かめたくは無い。

「もともと僕はタバコの臭いが苦手でね。だから、体に悪いものと分かっていて吸う人の気持ちも残念だけど理解ができないんだ。」

「まあ、もっとも、未成年の喫煙は法律で禁止されているのだから、有紗はしてはいけない事だと分かっていて、こっそり吸っていたんだろうけど。」

「タバコ、やめるね?」

「はい。」

「約束だぞ。」

「はい。」

この約束が一番怖い。

法律がどうこうより、先生と約束してしまった事のほうがよっぽど重大事項だよ。

「健康にも悪い。できれば成人しても吸わないでいて欲しいけど、まあ、それは有紗の自由だから。」

「もう吸わない。」

「今後も吸わないと約束しちゃっていいのか?」

「はい。」

少しでも罰を軽くしたかったからかもしれない。昨日の夜から、今日一日中ずーとお仕置きされる恐怖に襲われていた。

「覚悟できているね。」

「仁先生、もう吸わないから。」

「質問した事に答えなさい。見つからないように影でコソコソしていた事に対して覚悟はできているかと聞いたんだよ。」

意地悪。

「わかってます。」

「まったく、すぐ逃げようとするその態度は改めさせる必要があるね。」

「膝の上に来なさい。」

 

パーン。パーン。パーン。と始まった。叩かれるのは覚悟していたとはいえ、授業の時間が無いほどお仕置きすると言われていた事が恐怖となって、一体どれくらいで叩かれるのか、不安で不安でしょうがない。

「先生。もうしません。」

パーン。パーン。パーン

「ごめんなさい。」パーン。

今日のお仕置きは始めから、めちゃくちゃ痛い。

パーン。パーン。パーン

パーン。パーン。パーン

お尻の下のほうがズキズキとしてきた。

「もう堪忍して。」

すぐにギブアップ。

「たっぷり叩くといっただろう。」

パーン。パーン。パーン

「だって、もう痛いぃぃぃぃ。」

ヒーヒー情けない声で訴える。

「だめだめ。誰かにタバコ勧められてもお仕置きを思い出して断るくらい厳しくしておかないとね。常習性のあるものだから。」

パーン。パーン。パーン

「本当にやめる。やめられるから。」

パーン。パーン。

パーン。パーン。パーン。

「ごめんなさい。」

「隠し事も、もう絶対にしない。ちゃんと反省してるし。」

パーン。パーン。パーン

「口では何とでもいえるからね。」

そういって、お仕置きの手は一向にとまる様子は無い。

パーン。パーン。パーン

パーン。パーン。パーン

 

「酷いよ。もうごめんなさいっていったのに!」

 

逆切れで言ってはいけない事をいってしまった。

1拍おいて低い声。

「それが本心なら、ちゃんとわからせる必要があるな。」

手は止まってるけれど、自分の言ってしまった言葉の恐ろしさに青くなる。

「思ってない。うそ。ごめんなさい。」

「誰が起き上がっていいといった?」

先生に思わずすがりついていた。

「そこのソファーに手をつきなさい。」

それって何?すごい恥ずかしい格好じゃん。

「聞こえたんだろ?そのままお尻を出した状態でソファーに手をつきなさいといったんだ。」

嫌なんていったらその分あとでお仕置きされるだろうし、しぶしぶながらソファーに向かう。

「そう。お尻をちゃんと出して。そのままでいなさい。」

部屋から先生がでていった。膝に力が入らない。

このままの姿勢でいつまでいるんだろう?と次にされる事より、今が気になってしまう。 何? 

すぐに先生は戻ってきた。

「ちゃんと手に力入れてその姿勢を保つんだぞ。」

ピシー

と叩かれたときにそれが手による痛さで無い事ははっきり分かった。

ソファーにくずれ、いやいやと泣き出す。

「物差しで叩くのはちょっとかわいそうかと思ったけどね。」

そういって、またぐっと元の体勢にもどされる。

「今から12叩くから、姿勢を保っていなさい。」

「無理。無理だってば。」

叩かれるたびに膝ががくがくしてしまい、12発終わるのにはたっぷりと時間を要した。

「ちゃんと膝に力が入っていないと、お尻じゃないところに当たるぞ。」

そういわれても力なんて入らない。めそめそしていたら、本当にモモに当たって、ありえない痛さ。

「痛い。」

「言われたとおりちゃんとできないからだろう。」

自分が悪かったとはいえ、手でさすって、もう打たれないようにかばう。痛い。

「手をソファーに戻しなさい。」

先生は無情にもそういう。

 

仕方なく、のろのろともう一度ソファーに手を付く。ももに当たった痛さは二度とごめん。なるべく体制を保つように心掛けた。お尻への一打とはちがって、ももに入った一打はそれだけ恐ろしく痛かった。

比べたらももの方が痛かったが、もちろん、お尻への一打一打は何も考えられなくなるような痛さだった。全ての事を後悔するような痛み。

 

「もうしません。」

何度となくつぶやいて、ようやくお仕置きが終わった。

 

オニ。自分がしでかした事がどれほど厳しい結果になるか、これだけ身をもって体験したら、本当にもう当分タバコいたくなっても、吸う勇気が無いかも。

「言っておくけど。タバコに関しては僕も敏感だから。有紗の場合は現行犯でないと大人しくお仕置き受けずに、ごまかして逃げられそうだったからね。」

 

それって、前から実は知っていたって事?あのファミレスは偶然見つかったんじゃないってこと?

あまりに恐ろしくって追求はできなかった。

先生はいつもの右の口元を上げた超かっこいいにっこり顔をして見せた。

・・・やっぱり? 

なんでもいいけど、タバコはやめる。約束しちゃったから。

 

<戻る>

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送