1級じゃなくって、準1級か、2級から始めればよかった。
試験代もったいないし、何回も受験するの面倒だし。なんてケチな事考えたなら、もっと勉強すればよかった。
どうしよう。駄目だったなんて仁に言えない。
ちょっとはこれでも勉強したんだけどさ。検定受けるなんて事前に言うんじゃなかったな。
「仁」
「ん?」
「そばにいるの確かめたかっただけ。」
はあー。せっかく仁の部屋に遊びに来てるのに、お仕置きになるような事わざわざ話題にしなきゃいけないなんて。
「仁?」
「なに?」
「人間たまには失敗もするけど、次に取り返すように努力すればいいんだよね。」
「何の話?」
「一般論。かな。」
つけていたテレビが消される。
「例えばとういう?」
肩にまわした手で私の右頬をさわる。仁の顔見たら、絶対言い逃れなんて出来ないよ。
「ち、ちがうの。何にもしてない。」
「そういう、動揺したしぐさが非常に怪しい。」
「ほら。言ってご覧。」
「怒らない?」
笑顔が本気じゃないのだってわかってるけれど、すがるように聞いてみる。
「その感じだったら、多分怒るんじゃないかな?どう思う?」
「どうって・・・。わかんない。けど、怒らないといいな・・・とは・・思う。」
ええい。ままよ。
「漢字検定さ、受けるって言ってたでしょ。」
「今回駄目だった。」
「どうしてそれを、僕が怒るなんて思ったの?」
「・・・」
「理由があるんだよね?やましいような。」
「有紗?」「口を開くのをずっと待ってなくちゃいけないのかな?」
「自分でもさ、結果見てショックだったんだもん。」
「もっと勉強すればよかったって後悔したんだもん。」
「なるほど。」
「勉強しなかったわけだ。」
「しなかった訳じゃないんだよ。」
ふわっと肩に乗せたれた手によって、仁の膝の上に倒れこむように乗せられる。
「まって、これには訳があるの。」
「聞いてもいいが、本当に俺に言っておきたい理由なんだろうな?」
「かつての家庭教師を納得させられるような。」
お尻の上の手が、恐怖心を一層あおる。何故かよからぬ方向に確実に進んでいる気がしてならない。
全然うまい言い訳が思いつかないよ。
「やっぱり、いいです。」
小声で降参宣言。
パチン!
「やだ。始めるって言わないうちにいきなりなんて。」
「あきらめてたっぷり泣きなさい。」
「たっぷりお仕置きした後、聞いて欲しいなら話を聞こう。」
パチン パチン
「痛いよ。仁。次の試験は本気で頑張る。」
パチン パチン パチン パチン
お尻に当たる手。当たるなんてもんじゃない。目からじんわりと涙が出てくる。
痛い。本当に怪力。
「反省してる。後悔してるって。」
「試験前に、怠け心が出たら思い出せるようにたっぷりとお仕置きしておこうな。」
“鬼家庭教師”のあの頃、好きなこの人に、こんな風にされるのがたまらなく嫌だった。
勉強ちゃんとしなかったら、仁は本気で怒った。今もそれはちっとも変わらない。
ちゃんとしない時、約束守れない時。
仁が怒るのは当然なんだけど。泣いても、ゴメンナサイといくら言っても、仁が判断するまでは膝の上から降りられない。
「仁、ジン・・・。もう。堪忍・・・。」
「まだ。」
そういって、たっぷりと後悔してる私にまだお仕置きをする。
仁は、私の事、分かりすぎてる。
でも、私がこんなに好きだと思ってること、ちゃんとわかっててくれてる?
それが一番わかってて欲しい事なんだけど・・・。痛いお尻の痛みに耐えながらそんな事を考える。『他の事考えてるなんで余裕だな。』ってバレたらきっと、お仕置き追加間違いないから、大人しくお仕置きを頑張って受ける。
「痛いよ。」
泣きながら、ゴメンナサイを言う私はやっと、膝から下ろしてもらえた。
お仕置き終わって、反省させられて、ちょっと拗ねて甘えた。
「なんだ?拗ねてるのか?」
「違う。そばにいるの確かめたかったの。」
ソコに込められてる言葉の意味。ちゃんと分かってよ。仁。
そっと髪の毛の間に仁の手がからまる。
その優しい手つきがさっきまであんなに泣かされた同じ手だというのに、
たちまち私を幸せにする。
「なんなら、テスト勉強付き合おうか?」
「一人で出来る。」
慌てて辞退する私はすっかりロマンチック気分が吹っ飛んだ。
酷い。仁たら、笑ってる。
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