もうすぐ春が来る。

ふわふわした気分で今日は仁の家。

 

もうすぐ、優しい季節がまたやってくる。

 

 

 

 

 

 

「有紗?どうしたんだ?その腕?」

 

ギク。

しまった、つい腕を捲くってしまった。

 

「ちょっと。」

 

「ちょっとって?」

 

外のデートはやめて、仁のお部屋。

 

お昼に有紗特製のヤキソバを作ったまではよかったのだけど、食器洗おうとして腕捲くりしたのがまずかった。

 

「手を止めてこっちへおいで。」

 

「どうしたんだって?」

 

「ちょっと転んじゃったの。ドジだからさー」

あはは。と明るく答えてみたけれど、敵もさるもの・・・

 

「転んだくらいでどうしてそんなに言いよどんだりしたの?」

 

「えーと。」

 

「あ。」

「ほら。この年で転んだなんてちょっと恥かしかったから。」

笑ってごまかそうとしたんだけれど、仁の心の中の動揺なんてすっかりお見通しと言わんばかりの目と目が合う。

 

「なーんか、隠していない?」

 

「ないない。」

 

「じゃあ、質問を変えよう。」

 

「どうして転んだの?」

 

「えー。もういいじゃん。」

 

そういって立ち上がってそそくさと食器洗いに戻ろうとしたんだけれど、

「有紗、話はまだ終わってない。戻ってここに正座しなさい。」

 

えー。そんなの・・・。どうしよう。オロオロと立ち尽くす。

 

「有紗!」

 

「はい!」

仕方ないよね。仁の前では私は時にとても子供のようにお説教される。

お説教だけで済めば良い方で・・

 

「話して。」

 

仕方ない。これ以上は粘れないし、ごまかせなさそう。

3日位前かな。駅行く道の角曲がった所で人とぶつかって転んじゃったの。」

「自転車倒れて強く打ったから、青くなっちゃって。仁が心配するかと思って黙ってたの。」

 

「そりゃあ、心配するよ。」

 

「心配させたくなかったの。さ。食器洗っちゃうね。」

 

「有紗。まだなんかやましい事あるね?」

ギックー。

 

「え?何で?」

 

「無いって答えなかったのは肯定しているって訳か。」

 

「座って。まだ終わってないよ。」

 

「・・はい・・・」

沈黙

 

「言わなきゃ分からないよ。僕は有紗の事を四六時中監視しているわけじゃないんだからね。」

だって、言ったら絶対お仕置きだもん。

 

 

 

 

「なるほど。それが有紗の態度と言うわけだ。」

「膝の上じゃないと話せないのなら、仕方ない。来なさい。」

 

「あー。待って。待って。言うから。」

 

そう言ったのに、『来なさい』の一言

 

仁がソファーに座って、私は膝の上。あっという間にお仕置きの環境が揃ってしまう。

 

膝に乗る前に、ちらって、顔を見ると、怒った顔。

私も見なきゃいいのに。見てしまったものだから余計に怖くなる。

かわいいピンクのショーツはこんな風に下げられる為に履いて来たんじゃないのに。

 

パシン

仁の一打はいつもとっても痛い。

 

「痛い。」

 

まだ何も聞かれてないのに、いきなり始まってしまうの?

 

「これは隠し事した分。」

 

「正直に言わない子はどうなるかたっぷりと教えなきゃね。」

 

「やれやれ。」

 

そう言って、ピシ、パチン、とお尻が叩かれる。だって、まだ何も話してないのにこの痛さ?痛いよ。いくつもらわなきゃいけないの?痛いよ。仁。

「言う。言うからお願い手を止めて。」

 

「そのまま言ってご覧。」

 

「ムリ。ムリムリ。痛くって喋れないよ。」

ピタって手が止まる。言えってことだよね?

 

「じ、自転車に乗ってて、曲がった所で向こうから来た自転車よけ切れなかったの。」

しーん。

パシン パシン パシン

「一日中こうやって膝の上にいたいのなら望みどおりにしてあげよう。」

 

「あー。待って。まだ言う事があります。」

手が止まる。

 

「自転車乗りながら、実はメールしてた。」

「有紗!」

バチーン 

 

「い。いったーい。」

 

手がお尻の上に置かれたまま止まる。

いつ再開されるのか、痛みの恐怖と、仁のお仕置きがどれくらい厳しいのか分からず、

一瞬が何時間の事のようにも思える。

 

「降りて、壁に向かって立ちなさい。」

 

「仁?」

 

「常識で考えてすべきでない事もわからないの?」

 

 

 

「そういうわけじゃ。」

 

さすがに気まずいし、言葉が胸に刺さる。ごもっともすぎて耳が痛い。

「今日は泣く事になるよ。」

 

「そんな、仁。ねえ。」

 

そのまま動くんじゃないよ。

そういって一人になって、下を向くと、自分の下着が見える。痛いのも嫌だけれど、この状況もかなり恥かしくって、痛いの我慢するから、さっさと終わってほしい気分。

 

パン パン と音がするので見ると、2つ折にしたベルトを引っ張っている仁が戻ってきた。

 

 

「痛いよ。」

「動くと、違うところに当たるから、動くんじゃないよ。」

 

そういって、恐怖心をあおっておろされた一打。

「ひっ!」

自分でも思ってもみなかった痛みに思わず悲鳴が。

痛いの我慢するからってさっきのあれは撤回。我慢だなんて、できるわけがない。

 

「痛い。嫌。いやー。じーんー。いやー。」

 

「ちゃんと立ちなさい。」

 

そういわれたけれど、床に崩れたまま、動けない。

ソファーにお腹をつけるように言われ、四つんばいのような格好になる。

 

こんなに、痛いのに、まだ終わらないんだ。そうぼんやり思ったのだけ覚えている。

パシーン パシーン

 

「自分だけじゃなくって、人にも危険な事して。」

 

だから、痛いってばー。そんなのしかも言われなくたってわかるっつーの。

 

「ひい。いい。」

といいながら、心の中では辛くって、早く終わってほしくって、散々悪態をつく。

 

「ごめんなさいは?」

「ごめんなさい。」

そうだった。言ってなかった。あまりに痛くって、忘れてた。ってことは・・・。

 

「これ以上はベルトはムリだろうからね。」

 

あれ?仁?終わり?いつに無く優しいかも。

 

「膝の上においで。」

って、やっぱり。そうだよね。一瞬のぬか喜びだったか。とほほ。

 

「あと10発、たっぷり痛くしようね。」

 

そういって、まだまだ、たっぷりと痛くという言葉に比例するように大声で泣く事になった。物指しよりも、もしかしたら、痛かったのかも。

明日は蚯蚓腫れになってるよ。仁が物を使ってお仕置きするのって、タバコ吸って怒られた時のように、私が自分の体の事考えなかったり、“安全”じゃない事した時。

 

そして、仁の前では結局いつものように隠し事は無理だった。

 

「いつも、有紗が一番大事だ。」

そういってぎゅっと抱きしめてくれた仁。

 

「誰よりも、一番だ。」

 

こんなにしっかりと後ろから抱えるようにして抱きしめてくれたジン。

嬉しすぎて、ちょっと切ないくらい。

 

お仕置きさえなければいいのに。

 

あの日、桜並木を歩いたあの思い出の季節がまたやってくる。

「いつも抱きしめてて。ただただ。優しく甘やかして。」

腕の中でそういったら、

 

「悪さしなければいつでも優しいだろ。」

そういって、バカな私を抱きしめてくれた。

 

 

2003年 有紗4へ 

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