二人の兄がいる。上が「和弘」、二番目が「浩二」二人とも、私には超甘い。ブラコンといわれようと、なんと言われようと、兄とのお出かけは楽しい。
でも、カズちゃんが大学に入ってしまってからは、あまり家に帰ってきてくれなくって寂しい。その上、浩ちゃんまで受験でしばらく相手にしてくれないと思ったら、この春から大学に行くようになって、外泊ばかり。私は相変わらず、お兄ちゃん達にかまってもらいたくって仕方が無いのに、肝心の二人がちっともいない。
カズちゃんも浩ちゃんもひどいよ。
そんなわけで私も真似して無断外泊。由美の家に転がり込んで、借りてきたビデオで時間つぶす。
「ねえ、佐緒里、まずいんじゃないの?大好きなお兄様に嫌われちゃうよ?」
冗談半分で嫌なこという。
「いいじゃん。泊めてくれるって言ったのに。」
「それはかまわないけど。」
「さっきから、お家から携帯にかかってきてるじゃん。出といたほうがいいんじゃないの?」
「いいの。いいの。」
ちょっと罪悪感は感じたけど、私をないがしろにすると大変なんだからと言うところをみせつけたかった。」
次の朝、学校行く前に着替えに家に帰ると、そこには、家族3人がそろっていた。
「心配して警察に届けようかと思ったのよ。お父さんに電話しなくっちゃ。」
母はほっとしたのか、抱きしめてくれた。父は単身赴任中。母はいそいそと私が無事に帰ってきたことを報告している。
ああ、ちょっと悪かったなと反省。
「佐緒里、こんなに心配させて。」
「だって、お兄ちゃん達だってやってるじゃん。」
「悪いと反省してないのなら、たっぷりとお仕置きだな。」
な、なに?お仕置きって?お説教ってこと?
「また、また。」
軽くおどけてみたけれど、カズちゃんの顔は怒ったまま。
まずったかな?とようやく怪しい雲行きを感じる。
「ごめん。ごめん。」
カズちゃんいつもなら、これくらいで許してくれる。
「ちょっと来なさい。」
そういって、ひさしぶりにカズちゃんの部屋へ連れて行かれる。
見ると、浩ちゃんもついてくる。浩ちゃんもフォローしてくれないの?もしや怒ってる?
連行される、罪人の雰囲気?浩ちゃんはさっきから一言も言葉を発してないしな。
「二度とこんな事をするんじゃないよ。」
「うん。」
生返事。
「よーし、じゃあ膝の上に来なさい。」
「え?」
「え。じゃない。お尻を叩く。」
「そんなの、嫌だ。」
「ねえ、浩ちゃん、カズちゃんやめさせてよ。」
「今回は佐緒里の味方はできないよ。大人しく罰をうけなさい。」
「そんな。」
ちらっとカズちゃんを見ると、泣き脅しは無理な感じ。頼みの浩ちゃんも駄目となると、仕方ないか。でも、膝の上に来なさいなんて、小学生の子供みたいじゃない。おどおどしながらカズちゃんの膝の上に乗る。こんなの初めて…。
「や。」
スカートがまくられ、パンツに手がかかる。逃げようとしたのに、浩ちゃんに手首を一まとめにつかまれて、カズちゃんががっちり上から押さえつけて逃げられない。
パーン。パーン。パーン。
初めて兄からされるお仕置きは酷く痛い。
「痛い。カズちゃん。ごめん。もうしない。ほんと。ごめん。」
叩かれるたびに、叫んでも、
「まだまだ、僕は許さないよ。」
パーン パーン
「自分で手を床につけられるね?」
そういって、浩ちゃんの手が離された。
しぶしぶ従う。
「じっとしていなさい。反省の色が見えるまでお仕置きだから。」
そういってまた再開。
パーン
「ごめん。もうしない。」
パーン
「痛い。カズちゃん、もう堪忍。」
パーン
「どれだけ心配したと思っているんだ?」
パーン
「皆一睡も出来なかったんだぞ。」
パーン。
そうか、そんなに心配してくれたんだ。
「ごめんなさい。」
わーわー泣いてごめんなさいをした。
「よし、もういいだろう。」
そういって膝から下ろされた。
「カズちゃんごめんなさい。もうしない。本当。」
「よしよし、いい子だ。」
「佐緒里、さあ、次は僕の膝の上に来なさい。」
終わったと思ったのに、耳を疑うお言葉。その声の主は間違いなく浩ちゃん。いつもかばってくれる浩ちゃんもなの?まさか。そう無理やり信じようとする自分がいる。
「浩ちゃん、佐緒里反省している。もう許して。カズちゃんのお仕置き身にしみたし。」
「いつも甘い僕だけど、今日は駄目。言われたとおりにしなさい。」
う。ここまで駄目といわれてしまうと、これ以上は無理か。カズちゃん見ると、あごでほらっとうながす。
何?いつもは甘いお兄ちゃんたちなのに。今日は豹変しちゃってさ。
「浩ちゃん、だって、カズちゃんのお仕置きもう受けたし。」
「僕も見ていたからね。それは知っているよ。でも、しきりにお仕置きから逃げようとする佐緒里の態度を見て、これはしっかりとお仕置きする必要があると思ったよ。何度も言わせると、もっと厳しいお仕置きをするぞ。これで最後だ。膝の上に来なさい。」
従うしかなかった。
私には超、甘いけど、体育会系の二人は後輩には超恐れられていたもん。同じ中学だから、噂は聞いてるし。
オニの中川って有名で、代々バスケ部のキャプテンだったお兄ちゃん達はめちゃくちゃに怖いって。運動神経抜群で女の子はキャーキャーいっていたらしい。
「もうしないから。」
情状酌量…。とわずかに期待をしつつ最後の悪あがき。
でも浩ちゃんは何も言わず手招き。もうここまで来たら仕方が無い。
膝の上にそろそろと乗る。
パーン。パーン。パーン。パーン。
「いったーい。」
「浩ちゃん、ひどい、やめて、痛い。」
カズちゃんの怖さを始めて実感したけれど、浩ちゃんはもっと痛い。怖い。痛い。怖い。
「浩ちゃん。痛い。ね、ね。」
あまりの痛さ、泣きべそかいて、許してもらおうと必死。
「やってはいけない事をしたら、どうなるか、たっぷりとお仕置きだ。」
「こんな大きくなった妹をお仕置きするとは思わなかったよ。」
パーン。パーン。パーン
「ごめん。本当。もうしない。」
パーン。パーン。パーン
「よし、これで最後だ。」
パーン。と大きな音がして、ようやくお許しがでた。
「さ、急いで支度すれば、まだ間に合うからね、ちゃんと学校いくんだよ。」
「もう、始まってるし、無理だよ。」
「2時間目には間に合うだろう。行きなさい。いいね。」
うううう。いいね。の一言が有無を言わせない。
「お尻が痛いんですけど。」
悪あがきとわかっていつつ…。
「当然だろうね。痛くなかったらお仕置きにならないからね。」
「学校さぼったりしたら、帰ってきてからまた膝の上だからね。どうするかは自分で考えなさい。選ぶのは自由だから。」
自由って、自由じゃないじゃん。
ああ、いつも優しいお兄ちゃんたちはどこへ行ってしまったの?
「これからは悪いことしたらお仕置きだな。」
カズちゃんがいえば、
「そう、いくらかわいいからって、ちょっと甘やかしすぎた。」
と浩ちゃん。
ああ。私ったらとんでもない事しでかしちゃった。トホ。
しかも誰の家にいたのか喋らされ、学校で配られる緊急連絡網の由美の家の欄に、携帯番号が追加されてしままった。『何かあったときはここにかけるか。』だって。信用なくしちゃったよ。
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